第6話 津倉佐々美、にゃんこの家でごちそうになってもいいかな?


いくつかの家々を通り越し、川を渡ったところにおっさんの家はあった。

デブ猫〈ショコラ〉の家はなんだかこの島に似つかわしくなく、変にしゃれてて古い洋館のようだった。

昭和のおっさんのような猫なのに、この微妙におしゃれな洋館。

なるほど、ショコラという名前もつきそうな感じ。


津倉佐々美は家の中に案内された。中からは一匹のメス猫が出てきた。どうやらおっさんの奥さんのようだ。やるな。このデブ猫。


「俺の奥さんのエクレアや」


デブ猫の妻〈エクレア〉がいそいそとやってきて「まぁまぁまぁいっらっしゃい~人間なんて久しぶりだわ、ほんとに」などと言いながら口元を手で隠すポーズでちょこんと猫座りした。


「ところでお嬢ちゃん、腹減ってないか?」


デブ猫〈ショコラ〉の問いかけに、そういえば、異世界に来てからまだ何も食べてないのに気づいた。

もう日も暮れてきて、窓から見える風景も薄暗くなっていた。


「すいていますけど…ゴチになってもいいのかな?」


今日、もしデブ猫〈ショコラ〉に拾われてなかったら野宿かって思ったら、変なおっさん猫とはいえ、拾われてラッキーだったかもしれない。ありがたや、ありがたや、田中ショコラさん。


すると、デブ猫〈ショコラ〉はこう言った。


「悪いな、母ちゃん、こいつになんか食わしたって。これからこのお嬢ちゃん俺が面倒みたるねん」


なんか、いつの間にかここで働くことになってしまっている。いいのか、津倉佐々美?


「そうやなあ、歓迎会ということで、お祝いや。ネズミの丸焼きでいこか!」


ひえー。


「やや…。ネズミはちょっと」


津倉佐々美の慌てる顔を見て、デブ猫〈ショコラ〉は大笑いした。


「ガハハハッ。ジョーダンや、ジョーダン。いまどき猫もネズミなんて食べへんって。ネズミみただけでキャーっていうとるからな。なにゃ、お前もその口やな」そういって、にやにやこっちの方を見た。


こいつ…。いつかネズミに耳かじらせてやる…。


そうこうしているうちに、デブ猫の妻〈エクレア〉が食事の用意をしてくれた。


ご飯とみそ汁と魚だった。


なんとなく予想した通りだった。

ネズミの方じゃなくてよかった。


「あり合わせですみませんね」とデブ猫の妻〈エクレア〉は人間のようなことをいい、みそ汁をよそってくれた。


「今日はお祝いやから、またたびいっぱい入れといたるわ」


そういって、デブ猫〈ショコラ〉はジッパーに入ったまたたびの粉末を津倉佐々美のみそ汁やごはんにかけようとした。


!!!!

津倉佐々美はあわててお膳を引いた。


間一髪でデブ猫〈ショコラ〉がまたたびを振るのを止めた。

またたび入りなんて絶対にいやだ。


デブ猫〈ショコラ〉は不思議そうな顔をして、「おかしなやっちゃな。きらいか?うまいのに。ちょっと試しに食べてみ」とまた、振りかけそうになったので、必死に死守した。


なにしてくれんねん。ほんまに!

あ、おっさんの関西弁がうつってしまった。


デブ猫〈ショコラ〉は不満げにまだぶつぶついっている。

津倉佐々美はデブ猫〈ショコラ〉のことはほっておいて、冷めないうちに食事をいただいた。


食事は普通においしかった。

この魚はこの島でとれたものだろう。新鮮だった。


デブ猫〈ショコラ〉も食事に満足したようで、ようやく機嫌を直したようだった。


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