第八話 中二時代
弱い上に緊張してしまい、必要以上にしゃべってしまう。
その傾向が強くなったのは、実は、自称・朧桜の君の要望でついさっき解説した総合学習の和菓子について発表した時からだった。
中学校の総合授業でのプレゼン。
それなりに資料をまとめたクラスメイトたちは、皆必要以上に目立つことなく、それなりに淡々と発表していた。
ところが、調べものに力を入れていた美美は、事前に資料の添削をしてもらった教師からのお墨付きと、明神さまの草もちをほぼ再現できたうれしさから、嬉々として喋りまくってしまったのだった。
中学二年生という、新入りでもない受験生でもないうつうつとした世代にあって、それは完全に失態だった。
教師からは賞賛されたが、それがまたよくなかった。
誰かの舌打ち、わざとらしく椅子を引く音、そして、うざっ、と書かれたノートの端紙がまわされてきて、そこで、美美はキれた。
キれて、立ち上がって教卓に大股で歩んでいき、時間オーバーで話しきれなかった発表資料の内容を、しゃべり倒した。
あまりの滑らかな解説っぷりに、クラスメイトも教師も呆気にとられて、制止することもできなかった。
授業が終わると、美美は、バッグに全てを詰めて教室を出た。
それが、中二の七月。
期末試験後の気の緩んだざわつく時期だった。
一学期が終わるまで美美は登校しなかった。
そのまま夏休みの補講にも出ず、すっかり無気力のまま中二の夏は過ぎていった。
そして、九月の始業式。
夏休みという長いインターバルは、美美の暴走を打ち消すのには十分だった。
中二の夏休みの子どもたちは、羽根を伸ばし、事件を起こし、時に切ない事故を起こしたりと、話題に事欠かず、夏休み明けに登校した美美にはもう誰も注目しなかった。
それから卒業までは、細心の注意を払ってやり過ごし、進学した女子高では、文化系クラブで気の合う友人ができ、穏やかな三年間を過ごした。
大学に入ってからは、きらびやかなキャンパスで浮かないよう、
けれど、蘊蓄語りを抑えるのは、美美にとっては相当なストレスだったのだ。
久しぶりに帰った実家で、心から望んでくれる聴衆を得て、思いっきりしゃべり倒すことができて、すっきりしている自分がいるのに美美は気付いていた。
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