第1話 化石願望
「化石になるよ」
「化石って…あの化石のことかい」
「そう」
「何故また急に」
「変わらないから」
「変わるさ」
「変わらないよ」
「いいや。化石になるということは、君のその綺麗な肌がすっかり溶けて、一番壊れにくい骨だとかが何か別の物に取って代わるということだから」
「成分は関係ないよ」
「そうなの」
「うん」
「でも君が死んでしまうということじゃないか」
「でも化石になれば不変だ」
「ただの思い込みだよ」
「何故そう言い切れる?」
「不変なものなんて何もない。化石だっていずれは風化する」
「でもこんな身体よりかはずっと保つでしょう?」
「ねえ、何故そんなにも化石になりたいの?」
「だってあなたより早く死ぬことが分かりきってるから」
「そんなことはないだろう?同い年なのだから」
「天命というものがあるんだよ」
「しかし、化石になったところで君は死ぬじゃないか」
「化石になればずっと残るよ」
「化石になるには気の遠くなるような時間がかかるんだよ」
「その間は生きているんだよ。化石になって初めて死ぬんだ」
「成程。じゃあ私も化石にならなくては」
「あなたには待っていてもらいたい」
「どうして?」
「あなたが死ぬ時が、化石になる時だから」
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