化石

爽月柳史

第0話 冬邂逅

 君と出会ったのは、春の風が優しく吹く日だった。


 君はベンチに腰かけて、静かに本を読んでいた。あまりにも静かな君はページを繰る手の動きが無ければ、精巧にできた人形のようでさえあった。


 全ての生命が湧き出す季節に皆が浮かれる中、ひっそりと本に目を落とす君の姿を一目見て「冬のようだ」と私は感じた。


 全ての生命が凍てつき、死に絶える静かで清潔な季節


 君の姿は私にそんなイメージを与えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る