無職無能俺、神戸で就活帰りにハーレム勇者に就職決定！？

後日談

翌日、午後二時四〇分頃。隆太は大阪府門真市内にある電子部品製造の町工場にて、中途採用面接試験を受けていた。

「えー、ほな、まず初めに谷添さんが今までの人生で一番自慢出来ることをアピールしてみてや」

「えー、その、わたくしは、意外にも、リーダーシップも発揮したことがあり、その、つい先日、旅行で、後輩達を、引率」

「それ、面接のマニュアル本に書いてあった内容のように思えるねんけど。いやぁ、もうずいぶん前からやけどね、うちに受けに来る若い子ぉはこういうマニュアル通りの受け答えする子がほんま多いんですわ～。まあそういう子は真面目でええ子なんやけどねぇ。まあどこの会社も似たようなもんやろけど。ハッハッハ」

「いえ、これ、本当、でして」

　あれ？　思うように話せない。冒険前と同じじゃないか。

　気さくなおっさんタイプの面接官に圧倒されてしまい、結局、今までと同様、面接は予定よりも早く終わって帰らされたのだった。

同じ頃、神甲台高校。

「あれあれ？　おかしいな。もっと軽快に動けると思ったのに」

「私も思うように動けないよ。今までと同じだよ」

「こらっ、桃尾さん、二星さん、私語禁止やっ！」

　千聡と虹子はダンスの授業で前回までと同様、見苦しい動きをしてしまった。教科担任に注意もされてしまう。

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午後四時半頃。隆太は帰宅後。

「摩耶ちゃん、俺、コミュ力大幅に上がった気がしたんだけど、旅の前と全然変わってないような気もするんだ」

　摩耶をゲーム内から飛び出させて不満を呟く。

「そりゃ変わってへんよ。あれはゲームの世界やから。リアルの日常生活には何の影響も及ぼさへんで」

　摩耶はにこにこ顔で伝える。

「そんなっ！　普段よりも上手く話すことが出来てたのが実感出来たのに」

「それについてもゲーム内敵モンスター退治の旅の最中っていう特殊な状況下でのみ有効やったんよ」

「それもファンタジー要素だな」

　隆太はがっかり気分。

ともあれ午後五時頃、ゲームを返しに待ち合わせ場所の公園へ。

「摩耶ちゃん、稼いだお金が突然全部消えちゃったよ。なんでなん？」

「学力も全然上がってなかったよ。今日あった算数のテストもいつも通り悪かった。お守り持ってったのに。ママと虹子お姉ちゃんに叱られちゃう」

　彩葉と星乃は先に待っていて不満を呟いてくる。

「リアル兵庫県内に散らばった敵モンスターがゲーム内に全て戻されたから、得たお金も学力も旅開始前にリセットされてん」

「そこは現実に準拠して欲しかったわ～。もうすぐ出る今期アニメのブルーレイとか買いまくる計画がぁ」

「あたしも新作ゲームとおもちゃいっぱい買おうと思ってたのにぃ」

「俺もものすごーく損した気分だ。収入が得られたのに」

「ゲームと現実との区別が付かなくならへんようにと、製作者が配慮してくれたんやないかなぁ、っと思うで」

　摩耶は楽しそうにこう意見した。

　同じ頃、

「よかった見つかって♪　家に帰ったらやりまくるよ」

「千聡ちゃんもきっとのめり込んじゃうよ」

　千聡は虹子といっしょに学校近くの家電量販店を訪れて、あのゲームを手に入れたのだった。　

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「竹田城跡もリアルにそっくりね」

それ以来、千聡は観光地巡りをメインに毎日二時間以上は楽しんでいる。試しに液晶画面に麦茶をかけてみたが、こちらの摩耶も飛び出てくることはなかった。それが極めて普通のことだろうけど。

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あの冒険の次の土曜日、午前七時頃。二星宅。

「リアルＵＳＪ、めっちゃ楽しみや～」

「ワタシもすっごい楽しみよ。ほな行ってくるね」

「彩葉、それから、摩耶ちゃんも、最近遊んでばかりだけど、期末テストの勉強も怠らないようにしなきゃダメだよ」

「虹子お姉さん、分かっとうよ。否応なくやってくる現実思い出させんといてーな。まだ二週間以上あるし」

「ゲーム内時間では今夏休みやで。というより旅日記更新せん限り永久に夏休みや」

「ええなあ摩耶ちゃん。ワタシ、今度の期末マジやばいねんよ。特に数学と理科と英語」

「彩葉様、うちはその科目得意やで。いっしょにテスト勉強頑張ろな」

摩耶はあれ以降も頻繁にゲーム内から現実世界に飛び出して来て、三姉妹や千聡、隆太と交流している。

「彩葉、摩耶ちゃんと仲良くやれてるみたいね」

「うん」

　ちなみに三姉妹の母には、彩葉が摩耶が同じクラスの東京からの転校生で、神戸や大阪の名所をいろいろ案内して欲しいと頼まれたからという風に偽って伝え、外泊許可を得たという。

　ちなみに隆太はというと、相変わらず不採用続きだそうだ。

「うちの店やったら隆太様は大歓迎なんやけど、ゲーム内での稼ぎは現実世界には全く反映されへんからね。そもそも隆太様はゲーム内には入れんし」

「現実はやはり厳しいな」

（ほな、おおきに）