バカだね。

美形×平凡



「バカだね」


そう笑って、君はまたその唇を動かした。


「だから、好きだった。」


また、笑った。

僕は、息をするのを一瞬忘れた。

それと同時に、僕より頭一つ分低い彼の身長が、いつも隣に合ったことを思い出した。

この特殊な恋愛観が蔓延する男子校に入学してから、人より身長が頭一つ分高くて、人よりちょっと顔立ちが整ってるだけの平凡な僕は、周りから持て囃される機会が多かった。

それが受け入れづらくて、恥ずかしくて、俯き気味だった僕に、初めてまともに友達付き合いをしてくれたのが、彼だった。

彼は、平凡な僕より、さらに平凡な少年だった。

なんてことない、ただの友人だ。

それが、たまらなく安心した。

僕は、そんな彼が大好きだった。

学年を上がる度に、僕もこの学校の恋愛観に慣れていった。

あんなに苦手だったのに。

だって、同性を好きになるなんて、そんなまさか。

自分でも動揺していた。

三回目に見る、学校の桜の木。

それを彼と並んで見ていたら、自分の気持ちがなんだか不安定になった。

だから、情けなくも半泣きになりながら、ヘテロであろう友人に、相談してしまった。


『僕、好きな人ができた。でも…その人、男なんだ。水穂、僕のこと気持ちわるいって、思う?』


その僕の震える声に、水穂は隣で笑った。

そして、はじめの様に言ったんだ。

水穂が、泣き笑いしてるのをみて、たまらず叫んでいた。


「だった、じゃ淋しいよ!ずっと好きでいて!」



来年の春も、隣には君がいないきゃダメだと思ったんだ。





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BL短編集 くくり @sinkover88

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