第3話 経過と調査
「よ、ようやく返信が来たさね……遅いだわさぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!何やってんだいあいつは!」
そう孤児院の院長が愚痴をこぼすのも仕方がない。何故なら生まれながらに黒魔法の魔力を宿す赤子、ルクスが産まれてからあと少しで9年が経つところだった。
「はぁ。手紙の内容は、と」
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バーバラさんへ
まず、手紙は読ませてもらいました。第一感想としては普通の人族から産まれて黒魔法の魔力を持つことはまず有り得ないレベルでおかしいですね。
まぁ、そんなことは引退してから自分で立ち上げた孤児院の代表兼院長を担って長いとはいえ、伝説の元冒険者「烈風のバーバラ」ならお見通しだと思いますが。
そしてここからが本題です。
実は俺は最近になって現役を引退して、自分の知りたいことを調査すると同時に、ちょっと訳ありな理由があって孫の師匠をやることになりました。柄じゃないのは分かってるつもりですが、結構緊急事態なので許してください。
その関係で今回の返事も遅ました、すみません。
それにあたって、ルクスって子が強くなりたいと望むのなら、引き取って孫と一緒に修行させてもいいと思ったわけです。
ここから約1年後、バーバラさんとルクスのいる孤児院に寄りますから、その時までに返事を決めておくよう言っておいてください。よろしくお願いします。
追伸
でも魔法は教えるのは、俺は苦手なのでバーバラさんが教えてくれると助かります。
ジークより
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「まさかあのヒヨッコ坊主が師匠とはねぇ、アタシはもう時代の流れについて行けないだわさ……」
口ではそういいながらも、昔の記憶を思い出し、自分でも気付かずに笑みを浮かべていたのだった。
「よし。じゃあ丁度いい機会だからみんなまとめて一端の魔法使いにしてやるだわさ!」
そこでバーバラのやる気スイッチが入り、ここからおよそ1年間に及ぶ孤児たちの魔法訓練が始まったのである。
記念すべき最初の訓練内容は模擬階級検査だった。模擬と言っても、ベテラン魔法使いのバーバラが検査官をするので、実際の調査とほぼ変わらないのだが。
階級を調べる方法としては、魔力が底を尽きると自動で少し回復する薬を服用した後、検査対象の全ての魔力を、希少な魔力解析用マジックアイテム、「魔力の壺」につぎ込み、適性魔法がいくつあるのか、そしてその質と量を検査し、その総合検査内容から検査官が階級を決めていくという内容になる。
「アンタたちにはこれからワタシから魔法とかを習うわけだが、その前に各属性の魔力量と質なんかを調べるだわさ。今回の検査で現時点でどれくらいの魔法を使えるかは大体分かるさね、心の準備はしておくように!」
「は、はい!」
ルクスを含む孤児院の子供たちは緊張や期待が混ざり合って体がガチガチになってしまっていた。
「まぁそんなに緊張しなくてもいいさね。今回の結果があまり良くなくても、よっぽどじゃない限りは訓練をしっかりやればどうにかなるだわさ」
バーバラの言葉で何人かの子供たちが緊張でプルプルと震え始めている。どうやら逆効果だったようだ。
「よ、よーし。それじゃあ今から模擬階級検査を開始するだわさ!」
「はい!」
子供たちの大きな声が孤児院に響き渡った。
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