2つの派閥
「はい、これが私が書いていた魔法書です。あと一応こんなのも持ってきました」
そう言って俺は魔法書(笑)と文字の刻まれたナイフ、こいつは一応魔法剣とでもしておこうか。これらを持ってきてラグナに見せた。
「なぬ!これは・・・
竜次君これは絶対に我々以外にはみせてはいけない。わかったか」
「はっはぁ・・・わかりました」
そう言うとラグナは何か大変なものをみてしまったというように、あわてて本とナイフを返してきた。
「竜次君、君は魔法についてどこまで知ってるかね」
そうラグナは聞いてきた。とても深刻そうな顔で。
「えっと、想像を具象化、具現化でき、その想像がより鮮明なほど魔法が強力になる。ということだけは知っています」
「そうか、正確には魔法は想像ではなく強く念じることによって発動する。きっと本には言葉で言うとより使いやすくなるとか強くなるって書いてあったんじゃないか」
俺は肯定の意味を込めてうなずいた。
「それは、魔法が想像ではなく念じることにより発動する力だからだ。想像するとき人は無意識に深く考える、例え発動が速くても遅くてもだ、そう深く考えることによって間接的に念じることになる。だからより鮮明に想像するということはより深く考えるということになり、魔法が強力なものになる」
そこまで言うとラグナは一口紅茶を口に含むとまた話始めた。
「だがこの方法では欠点がある、わかるか」
「え~と人に干渉出来ないということですか」
そう言うとラグナは少し細く笑った。
「凄い、戦闘だけでなく頭もいいみたいだな。でも半分正解で半分不正解だ。
正確には精神には干渉出来ないんだ。しかし言葉で念じたとしても、人それぞれ念の強さに限界というものがある。いくら念じても相手の精神が強ければ干渉することは出来ない。というよりも精神にはいくつものガードがあってどんなに弱い生物でも精神さえあれば干渉することは出来ないんだ」
そこまで言われてやっと気がついた。俺は自分の本をみてはっとしてしまった。
「そう、君の本に書いてあった。降霊術というのは抜け道なんだ。そりゃ誰も想像はしないさ、死んだ人の魂もとい精神を戻して自分の傀儡とするなんてさ。確かにこれなら精神のガードも解けており出来るだろうが誰もが想像しなかったさ、こんなおぞましいことはね。他にも君が昨日やったていう"呪い"?というのも精神干渉らしいが、これはおそらく地上で君にしか出来ないだろうから人前ではみせてはいけない」
そこまで言うともう話は終わりだというように紅茶を飲み干した。
「さっ、ここからは稀代の天才君にこれからどうしてもらうかだが・・・」
ラグナが口に不適な笑みを浮かべた。
「知っているかい、宮廷魔術士団は言わば私の所有物なんだよだから、君をどこに配属しようと、なにをしようと問題ないのさ、書類に残す必要もないしね実に都合がいい。
間宮君、君には冒険者として旅に出てもらう。そこでいろいろなものをみてきてくれ。そしてその見たものを週に1回手紙で報告してくれ」
そう言うと再びカップに口を付けて紅茶を飲もうとした。しかしさっき飲み干してしまったのでもちろんからだ。彼は苦笑いしながらカップをトレーサーに戻す。
【増えろ】
「なに?」
竜次が試しにそう呟いてみると、空のカップから紅茶が湧き出してきた。そしてみるみるうちに増えカップから少し溢れてしまった。
「す、すみません。調節が効きませんでした」
「いやいや本当に君は天才だね、いやむしろ化け物といった方が的確かもしれない。普通は水が湧くだけで紅茶は湧かないんだがね」
そう言うとラグナはカップの紅茶を一滴も垂らすことなく少し飲んだ。
「いや驚いた味まで一緒じゃないか」
「すみません、一つ聞いてもいいですか」
「なにかね」
「西側と東側ってどういう意味ですか」
ラグナは少し顔をしかめた。竜次もラグナの表情をみてしまったと思ったが、口からでたものはもう戻らない。
「そうだな、これは話さなければならないな・・・
世界には国があるだろ、国ごとに色々な政治の仕方がある。この世界には世界同盟というのがあるがもちろん色々な国があるからそれも一枚岩ではない。そしてこの世界にいるのは人間だけではないんだよ。
獣人族というのがいてね、彼らは身体能力は優れているがもともとの念が弱い、つまり魔法があまり使えないということなんだよ。そこで私達人間族が神に逆らい力を失った種族として差別をした、しかしある時一国の王がそれはおかしいと立ち上がった。そしてそれに賛同するものが集い共存派が生まれた。
そしてその王というのがこの国レヴィナス帝国の第7代皇帝だったんだ。それ以来この国がある東側を中心に共存派が増え、共存派は東、人間派は西というふうに別れてしまった」
そこまで言うとラグナは深く座り直し紅茶を飲んだ。
「それにしたはなぜこの国には獣人がいないんですか」
「この国にも獣人はいる。わからない理由は獣人には変身能力があるからだ。この国にも西側からの冒険者はいる。
昔西側の旅人が獣人を無意味に切り殺したということがあった。もちろんそいつは処刑したがそのようなことをするのがそいつだけとは限らない。そこで獣人には変身を使って人間になってもらっているんだ。しかしこれも万能ではなくて夜になると解けてしまうんだ、そこでこの国では獣人とこの国の住人しか入れない区画がある。そうやって被害をなくしているんだ、ただし彼らだけに我慢させるわけにはいかない、そこで彼らにはカードが配られそれをお店で見せると買い物が2割引になるというふうにしている」
そこで俺は納得すると、冷めきってしまった紅茶に口をつけた。
「そこで君に聞きたい、君は獣人を差別するかね」
「いいえ」
即答だった。なんせ獣人である。獣耳、もふもふ、素晴らしい!なぜ差別するのだ、むしろ敬うべきだ!さえ思っているのだ。
「それは良かった。では準備ができ次第旅に出てくれ、もちろん装備品の数々のお金はこちらでもとう」
「あ、そうだ!もう一つ連絡は毎日じゃなくていいんですか」
「ああ、なんせ毎日は出来ない。そんなに手紙を運ぶ人も早くないからね」
「そうですか、わかりました」
「今日はありがとうございました」
そう言うと、俺達は家に帰った。
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