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あまりの、操艦の忙しさに操舵手のパットナム宙士長は、背後にたった男のことに気づかなかった。
立ったまま舵輪を握りしめて立つパットナム宙士長の背後にライフル一丁を持って立った天才は言った。
「見事な操艦だ。おそらくこの宙域で統合軍、我ら皇軍の両軍合わせても貴官ほどの操舵技術をもった人間はいないのではあるまいか」
「当たり前でさ、ごらんなせい、タッカム星系でペラフィン剤の依存症にさえならなかったら、今頃このパットナム宙士長様は、重巡、いや、戦艦の操舵手でしたよ」
と、言って、真後ろに立つ越乃少尉の方を振り向いた瞬間。
パットナム宙士長は、越乃少尉の発射した4.33ミリ炸裂弾ライフルの炸裂弾一発を頚椎の根元に受け、反対側の
真横に倒れた、パットナムを見ることなく、天才は言った。
「しかし、これでは、ダメだ。統合軍の超弩級の大型戦艦の土手っ腹にこんな小型の輸送艦がぶつかったぐらいでは、何もおこらない最後のもうひと押し必要だ」
天才は、そう言うや、くいっと舵輪をほんのすこしひくと、輸送艦グリーン・ベイのコースを超弩級戦艦"ニュー・アーカンソー"のブリッジに向けた。
そして、両舷最大船速にがっとスロットル・レバーを押し込み、輸送艦グリーン・ベイ艦内全域を無重力にした。
そして、天才は、コンソールパネルを蹴ると、無重力の中、後方に体を流し、グリーン・ベイのブリッジから出た。
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