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超弩級戦艦"ニュー・アーカンソー"の艦橋は輸送艦グリーン・ベイの艦橋以上にてんてこ舞いだった。
艦長のオブライエン二等宙佐が、事実上、第五艦隊全体の指揮を取っていた。
太鼓腹は、戦闘配置中に着用を義務付けられているスーツからでも、分かった。ヒゲには、戦闘中用レーションのかけらが、びっちり固まってくっつていた。
「巡洋艦"アーク・デライア"を早く、呼び出せ」
無線士が答えた。
「緊急用タイトビーム以外はすべて、ダブル・ガイド・ノードごとに切断されています」
「本気で言っとるのか?"アーク・デライア"に座乗しているはずの艦隊司令部の誰でも良い、呼び出せ」
「しかし、それでは、軍規違反になります」
その時、戦艦"ニュー・アーカンソー"の近くで爆発が起きブリッジが一瞬ものすごい光に包まれた。
うわー、、、、ブリッジの要員全員が悲鳴を上げた。
「軽巡のビーム兵器が偏向シールドに直撃しただけだ。かまわん、緊急用タイトビームを巡洋艦"アーク・デライア"に直接打ち込め、それより、CICの当直士官は誰か」
「パイク一等宙尉であります」当直の最先任下士官が答えた。
「なにをためらっとるんだ、あいつは。もっと撃ちまくれと、伝えろ。相手は、軽巡洋艦二隻に率いられた、只の二個水雷隊だぞ、火力では、こっちがはるかに勝っとる。水平に垂直に展開して、火力に物を言わせて、包囲し、粉砕するぞ」
第五艦隊の艦隊司令部は、丁度司令部ごと、居住性のいい重巡洋艦"アークデライア"に移乗している最中に不期遭遇戦が始まってしまったのだ。
第五艦隊の司令官、ゴルドー上級宙将は、
殆どを艦隊司令部の参謀または、大型艦の艦長に任せ、自室にこもっているのが常であった。
ただ宙軍兵学校の成績だけは、他に類を見せないほどの高得点をマークし、各任官、昇進の最低年齢の記録を次々と更新していっていた、しかし、それは、三十年も前の話だった。
「"
戦艦"ニュー・アーカンソー"の艦長、オブライエン二等宙佐は毒づいた。
今や、第五艦隊は、この一般大学卒の二等宙佐に率いられていた。
「無線士、タイト・ビームはどうした」
「ビーム波の波長によっては"アークデライア"の三次元ドップラー・アンテナを破損する恐れがありますが」
「急げ、もうビーム兵器の距離を過ぎてしまうぞ、皇軍連中の実態魚雷を食らうぞ。皇軍に破壊されようが、我軍のタイトビームだろうが、かまわん!今は、戦闘中の非常時だ。二個水雷隊などに、戦艦三隻、重巡洋艦五隻の艦隊が負けるわけにはいかんぞ」
さっきより、大きな衝撃波が、戦艦ニューアーカンソーのブリッジを襲った。
「実体弾だ」
ブリッジの誰かが、叫んだ。
「うろたえるな」
オブライエンが制した。
「偏光シールドが効いておる証拠だ。連中のビーム兵器は確実に跳ね返されておる、連中が焦って兵器を切り替えたのがその証拠だ。それよりCICを呼び出せ、艦隊の右舷の展開が遅れとるぞ、巡洋艦"ブラック・レーベンス"は、どうなっとる?」
オブライエンは、キャプテン・シートの足置きで立ち上がり、伸び上がり右側を見た。
艦隊の右翼は、だらだらっと後方に、下がっていた。巡洋艦"ブラック・レーベンス"より、右側に位置する、軽巡、駆逐艦、フリゲート艦はさらにだらだらと後方に遅れていた。
「ポールめ相変わらず、下手な操艦だ」
オブライエンが吐き捨てるように言った。
無線士が叫んだ。
「重巡洋艦"アーク・デライア"に確かにタイトビームを打ち込みましたが、返信はありません」
「返信があるまで、何度も撃て」
「アイアイ・キャプ」
オブライエン二等宙佐は足置きで立ち上がったまま。自身の直上もみた。
戦艦"ニューアーカンソー"を十字の中心にして、巨大な手を四方に伸ばしで皇軍の二個水雷隊をつかみたいのだ。
十字架の上の柱も遅れていた。
「重巡"アーク・サロトア"、ウィンガム三佐も遅い。懲罰ものだ」
戦艦"ニュー・アーカンソー"の砲雷長が叫んだ。
「艦長、宙間距離600。これより、接敵しては、大型砲艦の利点が活かせません。速度を落として下さい。距離を、距離を取らねば、大型艦のアドバンテージが」
皇軍の二個水雷隊は、統合軍では、おそらく駆逐艦に峻別される貧弱にして軽快な軽巡
二艦を先頭ににして、二本の針に導かれた糸のように、駆逐艦を率い第五艦隊の中心に正面からうねりながら迫ってきていた。
「蛮族のサル共め、丸焼きにしてくれるわ」
オブライエン二佐がひねり出すように言った。
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