8.『神の子』


何故モンスターが一体も居ない……?

砦を無事、脱出した俺達だが…ここまで来るのにモンスターが一体も居ないのだ…何故?

皆んな、不可解な顔をしている。わからない、俺もだ…やっぱり何かがおかしい…上手くいき過ぎてる。


「グサ!」

ん?何かも音がした…辺りを見渡すと、セイジが刺されて倒れている。

「お、おい!セイジ大丈夫か!?」

アルクス達は、セイジの元に駆けより状態を確認している、酷い、剣が体を貫通していた。早く回復魔法をかけなきゃ、セイジは死ぬ。

「アイス!」

「うん!光の精霊よ 今我に力を! ハイ・ヒール!」

アイスが回復魔法を掛けるが………魔法が発動しない?

「え?なんで?」

「アルクス…」

シリウスが、俺を見て話しかける、手が震えていた。

「どうした?」

「キララが…セイジを…」




『刺した………』



「え…?」


「ヒヒヒ…」

不快な笑い声が聞こえて来る。聞こえる方向を見ると、キララが笑っている…。

どうして、何故シンジを……?

「キララ、なんで?」


辺りが、真っ黒になり明るくかった平原が黒に染まる。

「うわっ!」

物凄く強い風が吹き付け、皆んな倒れこむ。


風が収まり、目を開けると…キララが悪魔の姿に変わっていた。


「悪魔の子………」シリウスが、呟く。


悪魔の子、聞いた事がある…その名の通り悪魔の子で人間に残酷な仕打ちを与える。

二つ名を『死の姫』………

「おい…どうして…」

「ははは!今まで騙されて来た感じはどうだ?全部私が仕組んだ罠だったんだよ!!セイジを刺したのも、コノハを殺したのも、ダンジョンに9階層、10階層の階層主を出現させたのもな!」


「え………」

言葉が詰まり、息が出来ない。苦しい……どうして………なんで…………


「何故、そんな事を……」

「お前が、神の子だからだよ。」

「神の子?」

「あー知らないのー?君ー48代目の神の子なんだよ?その、子を悪魔が狙わない訳無いよねー?」

何を言っているのか理解できない…俺が神の子?な訳ない……俺は、貧乏な家庭に生まれて慎ましく目立たない、静かな人のはずだ…いや……それだ、そうなるよう演じて来たのだから。今までずっと。


あれ?演じてる?どうして、こうなるいつも。


そうだ、俺………人間じゃないんだ…自分でも疑っていた。もしかすると俺は、普通じゃないかもと…



俺は、今まで一度も抜いた事の無い剣を抜く、剣は眩しく、輝く、美しい、光を纏っていた。


「はあ……消えろ………」


剣を、振り落とす。

大きな轟音と共に、悪魔の子が吹っ飛ぶ。戦闘では、無い。ただ吹っ飛ばしただけ……


「あははーあぶっねー死ぬ所だったよー」

まだ生きてたか『悪魔の子』次は仕留める。

さっきより、少し力を込めて剣を振り落とした、

「仕留めた……」

『悪魔の子』の、首が飛ぶ。


「強すぎる…」

アイスが、立ち尽くす。

「おい、アイス、セイジにヒールを」

「は、はい!」

ふと我に返ったような顔をしている、アイス



「また、仲間が減ったな」

「うん」


俺と、アイス、シリウス、セイジでダンジョンを出た。

その後、ギルドに『部隊全滅』とだけ伝えて宿に戻り、皆んな一言も喋らず。自分の部屋に入った


夜中、目が覚め

外へ出ると、アイスがいる。前もこんなのあった気がする……街の夜は肌寒く、少し風が吹いていた。

空が、泣いているのだろうか?今日の夜は、特別何かが変だ…

「アイス……」

「あ、アルクス目覚めたの?」

目から涙をこぼしながら話掛けて来たアイス、その表情は、悲しみが詰まっている………

「うん」

「私ね、生きて返って来れて嬉しいの……本当に、あの時死ぬと思ったからでも、アルクスが助けてくれた返ってきて、生きててよかったって思えた。アルクス……本当にありがとう…」


「………………俺は………………」

俺は、ただ剣を振っていただけ…ただそれだけの事、


「この、パーティーで良かったよ。私」

その瞬間、俺の心で何かが吹っ切れた。そのまま、体に任せアイスの唇に俺の唇を交わす。

月が、照らす優しい光が

「ん!」

アイスの、顔が赤い。

「あ、ごめん」

「え…いやいいよ全然…むしろ…」

「え?」

「いや、何でも無いよアルクス」

「そうか…」

そう言って、俺とアイスはもう一度唇を交わした。ーーーーーーーーー。


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