3 -仲間-

 長から頂いた鉱石に導かれるまま進んで行く。勿論飛行している私達は人間からすれば恰好の的であり、彼らの武器が空目掛けて打ち上げられる。


 ズドンズドン、と重火器が放たれる。

 普通の武器であれば魔法で叩き落とすこともわけないが、発展した彼らの技術を見縊っていた私達。放たれた小さい弾は、何かにぶつかれば光と音を出して炸裂する。目晦ましに近いそれを受ければ、当然よろめくか地上に落下する。

 何とかそれを持ちこたえても、次から次へと見たこともない武器が私達を足止めしてくる。


 それは毒であったり、身体を貫くような弾であったり、捕獲する為の固い針金で出来た縄であったり。



「もう我慢ならん! どうして俺達がこんな想いをしなければ…!」



 次々に殺され、捕えられていく仲間を見て我慢が出来なくなったのだろう。一人が大きく吼えた。ここでバラバラになってしまえば壊滅――いや、全滅だってあり得る。術を唱え炎魔法をぶつけようとしている。



「ミーシャッッ!」



 誰かが私の名前を叫んだ。それもそうだ、わざわざその魔法の前に立ち塞がり、私自ら魔法を身体に喰らったのだから。

 自らに魔法を纏ったとはいえ、魔力がまだ少ない15の私が大人の魔法を受け切るには限度があった。グズグズ、と皮膚が焼けている。熱くて泣き叫びたい気持ちをグッと堪えて、なるべく笑顔を作る。



「今…今人間を刺激すれば、もっと犠牲者が増えるかもしれない…。堪えて、先へ進みましょう」



 笑顔は引き攣っていないだろうか。

 敢えてダメージを受けた意味を、理解してもらえているだろうか。



「なら…見殺しにしていけって言うのかよ!」

「闘って、人間を屈服させる事が、長の――亡くなった者達の、望みだというのですかッ」



 声を出せば器官が焼き焦げるような痛みが走る。息をすれば肺が鷲掴みにされているような圧迫感がくる。右手はグズグズに溶けてほとんどなくなっているが、母様が私を痛みから護ってくれているのか、そこまでの激痛はない。



「このまま闘えば、人間達も仲間を失ったと言って攻撃が更に加速しますッ…そうなればもっともっと、多くの魔法使いが亡くなるのですよ。相手はどんな武器を持っているかも分からないです…今、ここで闘うのはッ…」

「綺麗事、言ってんじゃねえよ!」



 先ほどよりも熱く大きいマグマのような、炎の塊が私目掛けて飛んでくる。これを押し返してしまえば、彼は誤解したまま――そして他の魔法使い達も…


 同じように防御魔法を使って、魔法を軽減させようと思ったが、私の目の前で塊は炸裂し、そのまま横を通り過ぎて行った。

 狙いは私ではなく人間だった…!



「…後ろ、狙われてたの忘れてただろ、アホミーシャ」



 振り向けば彼の放った魔法は、弾丸を無力化させる程度のものだった。

 分かってくれたのだ。



「ほら、行くんだろ…フォー神様の森に」

「…はい、行きましょう!」



 近くにいた他の魔法使いが私の無くなった右腕に手をかざしてくれた。母様のお陰で高くなった治癒力も相まって、少しずつ腕が修復していく。

 その間にも人間からの攻撃は止む事がない。しかし…シールドを展開している魔法使い達のお陰で攻撃がこちらに届く事はない。


 皆冷静になって、判断が出来るようになったのだ。

 そうだ、こうして進めば大丈夫。力を合わせて、誰も傷つけずに進めば、失うものなんてないのだから。






 そう、絵空事を信じていた。

 絶対に争いはなくなると、人生経験をろくにしたことのない、甘い私は考えていた…

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