第2話 転校生の裏の顔
キーンコーンカーンコーンと、一限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
前後二人の事考えすぎて何にも聞いてなかった……。
「陽葵さん! どこから来たの!? 彼氏いる?」
「バーカ、そんなん聞いて素直に答えてくれるわけないだろ。あ、俺の事は警戒しなくていいよ?」
「俺のがこいつより性格いいから!」
男子の群れ気持ち悪!
休み時間早々に転校生にお喋りってか、実際可愛いし、モテるのも不思議ではないなあ。
俺もこんな清楚系美少女と付き合えたら嬉しいのになー。
「そんなに一気に質問しないでください」
陽葵ちゃん、冷静さが欠けてない事が凄いよ。
こんなにちやほやされて嬉しいという感情はないのかな?
「……竜希さん、私は少し貴方に用事があるので、中庭に付いてきてもらえませんか?」
「へっ!? な、なんで俺が!?」
「そうだよ! 何でこいつなんだよ! 俺のが断然いい顔してるじゃん!」
「いやいや、君より僕のが賢そうだし、全てが上に決まってる」
こいつらいろんなこと言ってくるな……!
そんなに俺の顔悪くないと思うんだけど……。
それに学力もこの学校に入れるくらいにはあるんですけど!
「あの、来れないんでしょうか」
「いえ、全然行けますよ」
生まれて初めて中二病以外の普通の姿でかっこつけた気がする。
この高校で俺は、中二病キャラとして定着しているが、果たしてそれを陽葵ちゃんに話して尚会話してくれるのだろうか。
いや、してくれないだろうな。
家は多分向かいのあのでかい家で、お嬢様のような人で、全てが完璧の陽葵には絶対に教えてはいけないことだ。
何としても隠し通そう──
「『
「……唯衣の馬鹿やろおおおおおお!! なんてタイミングでなんてことを言ってくれるんだ!」
「あ! 今唯衣って言った!? 我のことは『
「もう全部がぶち壊しだよ!」
はぁ……俺のラブコメ主人公気分もここで終わりなのか……。
失恋って虚しいな……まだ告白されるとも限らない状態だったけど。
「ライトニングマン……ってあだ名なんですか? じゃあ私もそう呼びます」
「ちょ、それは勘弁してください!!」
なんだろうこの複雑な感情は。
俺が中二病と知りながらも話しかけてくれる嬉しさ、同時にライトニングマンと呼ばれる悲しさ。
……喋れるだけ全然良きかな。
「それで、竜希さんは中庭に来てくれるんですか?」
「でも後一分ですよ? そんなタイミングに行っても何も出来ないのでは……?」
「なぜ敬語なんですか。確かに貴方の言う通り何も出来ないので、昼食二人で食べませんか?」
「マジですか!? 食べます食べます、是非ご一緒させてください!」
恋愛の神様はまだ俺を見放してないようだ……!
まさか、このまま付き合うところまで行くのでは……!?
など、軽い考えも出てきてしまうが、それもまたしょうがない話だろう。
「ちょっと待ってよ! ライトニングマンと食べるのは我なんだから、貴方こそどっか行ってよ! このロリっ子が!」
「全く、はしたないお方ですね。それに貴方は私の事をロリっ子って言える立場なんですか? 身長だってそんなに変わらな……いはずですよ?」
いや、二人の喧嘩を隣から見てる俺としては、十センチは違うぞ。
唯衣が百五十五センチで陽葵ちゃんは百四十五センチってところか。
確かにこれはロリっ子だわ……。
例えロリっ子だろうと、仮に付き合うことになったとして捕まらないよな?
……妄想が激しすぎるな、こんな清楚系美少女を俺の彼女にするなんて無茶なんだろうなあ。
「落ち着いてくれ、誘われたものを断るのは悪いし、俺は今日の昼食陽葵ちゃんと食べるから許してくれ」
「嫌だー! ライトニングマンさ、何されるかわかんないんだよ!? 嫌なことされるかも!」
「今一番嫌なことはライトニングマンって呼ばれてる事だよ。それ以上に嫌なことはそうそう起こらない」
「ぶー! じゃあいいもん! 一人で食べるから!」
流石に言い過ぎたのかなあ……。
学習能力ない奴はウザイなってマンガとか読むと思うが、現状では俺の事を指すんだろうな……。
何回幼馴染を傷つければ気が済むんだろうか。
そのまま二限目が始まり、終わりを迎えた。
「今度こそ僕と遊びませんか!? トランプもありますし、ケータイゲームだって基本的なものならなんでも……!」
「こんな奴と遊ぶくらいなら俺と遊ぼうぜ! したい事言えばなんでも納得してやってやるぜ!」
こいつらも飽きないなあ。
毎時間毎時間来るんなら俺は常にトイレにでも引きこもろうかな。
こんな友達でもない奴らが後ろでワーワー言うのは目障りでしかない。
スっと立ち上がり、俺はトイレに向かった。
「やはり、座れるトイレは楽でいいな。……この先どうなるんだ? 一番気になるのは、陽葵の呼び出し理由だよな」
そのまま同じようなことを繰り返し、昼休みになった。
「では、行きましょう」
「ほんとに俺でいいのか? 周りの奴らのがカッコイイ人多いのに……」
「顔で選んでる訳ではありませんので」
そのセリフを言いながら、髪をさらっと手で流す感じがお嬢様感凄い。
現代にこんなことする奴いるんだな。
「そんな中二病ほっといて、俺とご飯食べようぜ」
「何言うんですか、僕と食べるんですよ」
「は!? お前達な訳ないだろ!」
……何言ってるんですか?
一緒に食べるのは俺なんですけど。
こんな美少女と食べれるのは二度とないだろうし、満喫しようかな!
陽葵ちゃんについとこようとする奴らをシッシと追い払い、中庭で弁当を開いた。
「ありがとうございます、一緒に食べてくださいまして。ちょっと面倒ごとは避けたかったもので……」
「そうなんだ。で、何故俺と食べることを要求した? 俺もそこまで馬鹿じゃない、はめられたことくらい分かるさ」
マンガやラノベの見過ぎか?
なんか、この展開になるとこういう風に強めに言うのが当たり前だと思っていたんだが、めっちゃ悲しそうな顔で見られてるんだけど。
自分からラブコメ主人公をやめてるんじゃ世話ねーよな。
神様、仮に一つ言うことを聞いてくれるのであれば、この先も陽葵ちゃんと仲良く話せるようにしてください──
「ちゃんと頭回るんですね。確かに貴方を選んだのには意味があります。……私と、付き合ってもらえませんか!?」
「ええええ!? な、なんだよいきなり! どういう思考回路してんだよ!」
「驚かれるのも無理はないと思います。では、事情を話しましょう──」
陽葵ちゃんの言い分はこうだ。
転校する前の学校でも、同じように男子に囲まれ迷惑していたそうだ。
そのため、打開策として、自分に興味のなさそうな人か、操りやすそうな人を彼氏役にして、周りから人を来させないようにしているらしい。
要は俺は利用されるところだったということ。
「このビッチが」
「ビッチではありませんよ! 私はまだ処……な、何にもありません!」
何言いかけたのかもの凄く気になったが、この先聞くのは野暮だろう。
はぁー、折角現実に理想の清楚系美少女現れたと思ったのに、とんだビッチだったなんてよー!
でも、勿体無いし?
「さっきの件だけど、付き合ってもいいよ」
「ほんとですか!? ありがとうございます! 今度からたっちゃんって呼びますね♡」
そう言いながらウインクする陽葵ちゃんを見ながら、俺は一言呟いた。
「めっちゃ可愛いじゃん──」
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