第十七章 <Ⅴ>
暗闇に耳を澄ます。
もう一度 親友の声がききたくて 息を止めて耳を澄ます。
――どこにも いないの?
闇の大地に赤い蛇のような溶岩流がうねっている。
蛇の巣のような巨大な噴火口が、闇の中心で口を開けている。
あれほど激しかった鳴動は
淡い光に守られた二人は、闇の
「ごめんなさい。
林の翼の無い背中で、
「ポンヌフは、わたしのせい――。ママじゃないよ」
涙をたたえた瞳が振り向いた。
「謝らないで、ママ。――ここ、わたしの夢だった」
林は
わたしが悪夢に
「ごめんね、ママ。――全部、ママのせいにして」
「林? なにを言ってるの?」
「――わたしも闘う」
林は、涙をぬぐった
「だって。あいつは、わたしだもの!」
闇に真っ赤な口を開けて
「ポンヌフを取り返しにきたヤツは、わたしが夢で見たバケモノだった。おねえちゃんを、あんなバケモノの姿に
林の瞳が、キラリと地上の光を
「ちがうわ!
「ママだけじゃない!」 沙羅の言葉を、林がさえぎる。
「わたしも、おねえちゃんをバケモノだと思ってた! この悪夢は、ママの夢とわたしの夢が混ざってる! だから、こんなに真っ暗でドロドロしてるんだよ!」
「二人の悪夢――」
沙羅と林は、暗闇の底を振りかえった。
「ねえ、ママ。ほんとうのおねえちゃんは、ぬいぐるみを作るのが上手で、料理は大嫌いで、十六歳なのに五歳の
いま林は、木槿の笑顔をはっきりと思い浮かべられる。
「そうね。ほんとうの木槿は、わたしが泣いてると
沙羅は頬笑んで
「私たちの木槿は、あんなバケモノなんかじゃないよね」
林は、自分の
そこに
「さっき、この光に触れたら、マグマが消えちゃったよね」
「ええ。きっとポンヌフが守ってくれたのね」
「行こう、ママ!」
林はきらきらと輝く指で、暗闇の底を差し示した。
「この光で、あの中心を貫けば、わたしたち、きっと勝てる!」
林と沙羅は、流れ星のように闇を落ちていった。
ぐんと加速がつくと、灼熱のマグマがあっという間に目の前に迫る。
おたがいの腕が、相手を強く抱きしめる。
もう二度と
林と沙羅は、行く手の闇から目を
一切の感覚が消える。
全身を炭化し尽くすはずの炎が踊っている。
世界が壊れる衝撃と轟音。
その余韻が
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