第十七章 <Ⅳ>
私はこのバケモノから逃げてきた。
目を
でも。ようやく気づいたのだ。
このままでは、
私は、もう逃げるわけにはいかないのだ。
「
大地が火花を
マグマの山が押し寄せる。
その
(どろぼう! 返せ!)
バケモノの
「――えっ?」
林は息を飲む。
あれは――真夜中の露天商の声だ!
ポンヌフを取り返しに来たんだ!
そして。燃えさかる
「――!」
「林!」
「――ダメ! ママ! いやだ!」
その悲鳴までもが、高熱に溶かされる。
(どろぼう! 返せ! どろぼう!)
バケモノの
林の意識が途切れようとした、そのとき。
やわらかなものが、抱きあう二人をすっぽりと包みこんだ。
全身の痛みが遠ざかり、心地良いぬくもりが二人を
「え? あれ? ――ママ?」
「林! 林! 大丈夫?」
林と沙羅が顔を上げると、闇の空を白く
やわらかな羽が雪のように降りかかると、二人の体も光を
羽に触れると、灼熱のマグマも漆黒の
「ポンヌフ! ポンヌフ! どこ?」
あおざめた林が叫ぶ。――背中の翼が無い。
――ばいばい。
ポンヌフのあどけない声が、林の耳元でささやいた。
「ポンヌフ! 待ってよ!」
空中に差し出された林の指先に、白い羽がひらりと舞う。
――リン。だいすき。
そして――。
空いっぱいに舞い散る白い羽が、ろうそくの炎を吹き消すように、一斉に消えた。
「ポンヌフ! ポンヌフ――ッ!」
泣き叫ぶ林のからだを、沙羅が固く抱きしめた。
やがて暗闇が二人の周囲に戻っても、林と沙羅にまといつく淡い光は、いつまでも
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