第十七章 <Ⅲ>
――このバケモノは、まるで私だわ。
バケモノの
『水溜まりに映る自分の影は、鬼の顔でした。』
「
「そんなこと出来るわけないでしょ!」
きゅっと林の
マグマが噴きあがるごとに、地上には
いまでは見渡す限りの大地が噴火していた。
絶え間なく流れだす
「林、お願い! このバケモノはママなのよ!」
「――なに言ってんの?」
沙羅の眼差しが、娘の横顔を
この子を守るためなら、私はなにも恐くない。
沙羅の涙は乾いていた。
「林。『
沙羅はまた娘の耳元で叫ぶ。
「おぼえてるけど。――いま、そんな話?」
最後が金切り声になる。
焼けた火山弾が、林の髪を
――あの鬼は、宵待ち姫の夢から現れる。
だから宵待ち姫は、鬼から逃げることができなかった。
「あの鬼みたいに、このバケモノは、ママの夢から出てきたのよ!」
「――だからって、ママが
母の告白を
林の残した白い軌跡に、火山弾が
「ママ、あたり!」
林の背中でポンヌフが笑い声をたてた。
「あら? いまのがポンヌフ?」
沙羅がふしぎそうな眼差しをに林の翼に送る。
「ポンヌフ! あたりってなに?」
「おねえちゃんのヒント! ママ、あたりました」
子グマの声がうれしそうだ。
「ヒントって……。『宵待ち姫』のこと?」
「やったあ! リンもあたりました」
そう言えば、あの夢で、おねえちゃんは『宵待ち姫』の絵本を持っていた。
――宵待ち姫の鬼って、最後はたしか宵待ち姫にやっつけられるんだよね?
そのとき。重い爆発音とともに、マグマが高く
林は爆風に
「それがなに? いまここで何の役にたつのよ!?」
滑空する林は
「――林。大丈夫よ。ママが助けるから」
沙羅の温かい
母の瞳は、
「ママ――?」
林は
――ママって、こんなに勇ましい目つきができるんだ?
「――もしも、あいつに負けたら、どうなるの?」
林がつぶやく。
「夢から覚めないんだよ」
子グマが何でもなげに答える。
「それって。――この間の林みたいに?」
沙羅がぴくりと肩を震わせる。
地上では、またマグマが
土砂降りの豪雨のように、燃えるマグマが降りそそぐ。
「無理だってば! こんなのと、どうやって闘うつもりよ!」
林は高く旋回して、
「私が相手なら恐くないわ!」
口元に笑みまで浮かべて、沙羅が言い放つ。
「――ぶん
「――ええっ?」
林は耳を疑った。――うちのママ。いま、なんて言った?
「だってママ――。二度と目が覚めなくなったら――」
「勝つから大丈夫。ママを信じて! ママの言う通りにして!」
沙羅の声はどこまでも
わたしの知ってるママじゃない。宵待ち姫みたいだ。――と林は思った。
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