第十六章 <Ⅱ-3>
――どうしたのかしら?
まるで酔っているように見えたけれど。
梅シロップは緑の瓶。今年の梅酒は黒い瓶。
その隣の茶色の瓶は、
一昨年の梅酒は、こんなに
胸騒ぎがした。さっき
「やだ。大変!」
濡れた手を拭きながら、あわてて木槿のあとを追いかけたが、その姿は家のなかには見当たらなかった。沙羅は縁側のサンダルをつっかけて庭におりた。
「木槿! どこにいったの? むくげー!」
どこに行ってしまったんだろう。
沙羅は気を揉みながら、門口から通りを見渡した。
「むくげー!」
どうしよう。私の気のせいならいいけれど――。
たしか、あの子はグラスに二杯も飲み干していた。
その辺で倒れてしまったら、どうしよう。
叔母に相談しようと母屋に戻ると、今度は叔母の姿も見えなかった。
冷蔵庫に「お隣へ行きます」というメモが貼り付けてあった。
――もう、こんなときに!
沙羅は木槿の名を呼びながら、門口へ戻る。
近所を探そうか。サンダルの足を一歩踏み出した、そのとき。
開け放した二階の出窓から、幼い泣き声が聞こえた。
「ままー。ままー」
沙羅はあわてて
――戻らなくちゃ。林が目を覚ましたわ。
娘は寂しがりで、誰かがそばにいてやらないと、すぐに泣くのだった。
――たぶん梅酒くらい大丈夫だろう。もう十六歳なんだし。
沙羅は自分に言いきかせた。
それに梅酒を飲んだと、決まったわけでもないし。
「ままー。ままー」
林の泣き声が大きくなる。
「はあいー。ママはここですよー」
沙羅は子ども部屋に急いだ。
木槿の
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