第十四章 <Ⅲー1>
杉木立を抜けてゆくと、小径の先に
木漏れ日の降る山の斜面一帯がこのお寺の墓地だった。
その墓所には「
地面につもった枯葉を掃除して、
「長年、よく手入れしてもらってるなあ」
お線香に火をつけて、パパがつぶやく。
いつか見た景色に連れ戻されるような、懐かしい匂いの煙が立ち登る。
「
ママが
「おお、綺麗な花だね」
みんなが脇に
漢文の調べが森の空気に浸み込んでゆく。お線香が消えるまで、
「どうぞ、お寄りなさい。お粗末なものだが、食事の支度をさせてあるから」
和尚様に勧められて、
奧から
「みなさん。よくいらっしゃいましたねえ」
大きなお盆に湯気の立つお蕎麦をのせて出てきたのは、和尚様とよく似た笑顔の小さなおばあちゃんだった。顔も体も丸っこくてウズラみたいで可愛い。
「あら、大黒さん! すみません! それ、私が運びますから!」
林のママがあわてて席を立った。林もあとに続く。
和尚様の奥さんのことを「大黒さん」っていうんだってさ。――知ってた?
ぼんやりしてたら青深に蹴飛ばされて、あたしと陽蕗子もお手伝いに走った。
「いただきまーす!」
お蕎麦に入ってるキノコや山菜がものすごく美味しい。地元で採れたてなんだって。――来て良かった!
行きの電車であれだけ食いまくっていた青深が、また新鮮な顔でむさぼっている。
――ええっ? 焼きお握りまで頂けるんですか?
両前足でお握りを支えて笑っている
「林ちゃんは、
食後にお茶とお菓子を頂いているとき、和尚様が訊いた。
「はい。――ときどき夢に見ます」
林が和尚様の目を見て答える。
「ああ、夢か。木槿ちゃんは何か言ってたかね?」
和尚様が目を細める。
「ええと……。言うときも、言わないときもあります」
林が考えながら返事をする。
「そうか、そうか。――ものを言うたときは夢、と申してなあ」
和尚さんが皺の寄った顔をほころばせた。
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