Diary 10

〈白銀 林の日記〉 十月二十三日(日) つづき



 おねえちゃんの夢で、リンにあった。


 ほらあの、時雨しぐれちゃんに会いたがっていたビスクドールの女の子。



 どうやったら、パパのところに帰れるのだろうねって。


 ママと遠い水面を見上げていたときだった。



 黄金色こがねいろのドラゴンが、輝く胴体をくねらせて海底に降りてきたのだ。


 ドラゴンのつのの間に、黄色い着物の女の子が、ちょこんと坐っていた。


 髪を朱いひもで一つにくくって、黒目がちな瞳が可愛らしかった。


 その子がこちらに手招きする。


 おっかなびっくり近寄ったら、わたしとママをドラゴンの背に乗せてくれて。


 ポンヌフに言わせれば「こっちの」葛籠谷つづらだにまで送ってくれたのだ。



 輝くドラゴンにまたがって、深海を越えてゆく気分は最高だった。


 ママがもう喜ぶ喜ぶ。


 あまりはしゃぐので、ちょっと恥ずかしかった。



 その女の子が「ボクはリンです」と言った。


「リンって、お人形のリン?」と訊いたら、そうだと言う。


「この前とちがうね」と言ったら「こっちが、ほんとうなんです」と笑った。


「そして、この龍がほんとうのシグレさまです」とも言った。


「シグレって猫じゃなかったの」と訊くと、あれは仮の姿だったそうだ。


「どうして来てくれたの?」と訊いたら「ミルクの礼だ」とドラゴンが威張った。




 ほんとうに不思議な夢。


 時雨しぐれちゃんが聞いたら、なんて言うだろう。


                 < 了 >



     *** このあとは『宵待ち姫』の後編です ***

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