第十八章 <Ⅱ>
「しっかりしろ!
あたしは
「
「
あたしの隣で、
水車小屋の向こうに黄色のSUVが停まっている。
空はあくまでも青く。小川のせせらぎは
「青深。――今日って何日?」
「またそれかよ。いい加減にしろよ」
もう一回、
「あたしたち、どうしたの?」
ようやく覚醒した陽蕗子が会話に
「お前らはどうもしないけど、リンリンとママがいなくなったんだよ!」
「ええっー?」
コトン。コトトン。コト……。
「りいいいいいん! さあらあああああ! どこだああああ!」
水車の回る音をかき消す勢いで、パパが叫んでいる。
「りいいいいいん! さあらあああああ!」
――ぐわー! ケー! ぴるるるー!
「たいへん!」
あたしと陽蕗子がはじけた豆のように立ち上がった、そのとき。
「
――ぐわー! ケー! ぴるるるー!
鳥の群れが逃げまどう。――ごめんね、みんな。
先生が指差す方を見上げると、
「おおーい!
林のパパが大きく手を振って呼びかけると、二人が手を振りかえした。
「やれやれ、良かった。お騒がせしてすみませんでした」
パパは額に吹き出た汗をぬぐうと、
「そこにいなさーい! いま行くから――!」
「はーい」 「はーい」
二人の明るい声が答えた。
「いやあ。お恥ずかしい。申しわけありませんでした」
大股に歩き出したパパが、ため息混じりに苦笑する。
しきりに汗を拭いている。かなり動揺してたみたい。
「あんなところまで、いつの間に登ったんだろうな?」
そう言うパパも足が早い。ついていくあたしたちは半分走っている。
「奥さんは地元ですからね」
息も切らさずにパパと同じペースで歩きながら、権平先生が笑う。
あたしたちは、パパと権平先生の後ろから、段々畑へつづく木道の階段を駆け登っていった。
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