第十三章 <Ⅳ-2>
* * *
「
担任の穏やかな声に、
「おはようございます! いやあ、朝っぱらから、すみません。――
「ええ。そうですが。なにか?」
「いま、ニュースで、昨夜のメルボルン発の飛行機が天候が悪くて関西空港へ回ったって聞いたもんで、お困りじゃないかと思って連絡してしまったんですが――。やっぱり余計なことでしたよね?」
「まあ! わざわざありがとうございました!」
沙羅は電話を手にしたまま頭を下げた。
「夫も、そんなことを言ってました」
「ありゃあ、もうお帰りでしたかー。やっぱり余計でした! すみません!」
電話の向こうで権平が頭を掻いている。
「いえ、とんでもない! たった今、電話がありまして、
「え? 林さん、どこに行ったんですか?」
権平の声が真剣みを帯びた。
「あ……」
沙羅は、うっかりしゃべってしまったことを悔いた。
友だちと
つい先日、あの場所には行かせたくないと打ち明けたばかりなのに。
林につき合ってくれる優しい子たちが、担任に誤解されたりしては申しわけない。
どう伝えたものか考えているうちに、権平が笑い出した。
「さては……
「え、どうしてわかるんですか?」
沙羅は目を丸くした。
「あいつら、絶対やると思ってましたからね」
権平は息を切らして笑っている。「とういうことは、葛籠谷ですか?」
「はい。
「お母さんに黙って行ったんでしょう?」
「そうなんです。私、驚いてしまって――」
「なるほど! それを帰宅途中の白銀博士が見かけたというわけですね?」
「ええ。これから追いかけると言ってました」
「わかりました! あいつらめ。――よし! では、
「ええっ? 先生もですか?」
――みんな、どうしちゃったというのかしら。
「はい! 最初から、そのつもりでしたからね。車なら今から出ても確実にこちらが先につきますよ!
権平の電話が切れそうになった。
「先生! あの……、実はお願いが!」
沙羅はポンヌフを抱きしめて、携帯電話を握りなおした。
「はい。どうしましたか?」
権平が耳を澄ませている。
「すみません。――わたしも、連れていってもらえませんか?」
気のせいか、ぬいぐるみが頬笑んだように見えた。
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