<Diary 7>

〈白銀 林の日記〉 十月十八日(火)


 病院から帰宅して、久し振りに母と一緒にお昼を食べた。


 まともに母の顔を見たのも、久し振りかもしれない。


 まぶたがれて顔色が悪かった。すこし痩せたみたい。


 ごめんね。ママ。わたしのせいだよね。


 父が休暇を取ってタスマニアから帰ってくるらしい。


 無理してくれなくていいのに。



 久し振りに「よいひめ」を読んだ。


 わたしの本棚の、一番大事な本を置くコーナーに、ちゃんと並んでいた。


 あれだけくり返し読んだ本なのに、数年置いて読むと印象が微妙に変わる。


 「え、こんな話だったっけ?」と新鮮に感じた。


 何度も読み返していたら、玄関から友だちの声が聞こえた。


 本当に、また来てくれたんだ。


 時雨しぐれちゃんと陽蕗子ひろこちゃん。


 跳びはねたいくらい、うれしかった。


 でも、なんだか申しわけないことになっていた。


 二人とも、嘘のつけない性格らしい。


 パンダの折り紙をひらくと、中に「秘密メモ」と書いてあった。


 秘密って書いたらダメじゃん。


 笑ってる自分に、ちょっと泣ける。



 * * *


「☆秘密メモ☆」


 リンリンと愉快な仲間たちは下記の時間に集合してください。


  日時>> 10月22日(土)午前6時

  場所>> 白銀邸 門の前


  合歓森ねむのもり駅より 上り快速  6:22 

  小椋台こむくだい駅にて 巌山いわおやま線(下り各駅停車)に乗り換え  6:57

  終点・千尋縄ちひろなわ駅 到着  8:25

  葛籠谷つづらだに行きバス 9:11

  終点 到着  9:47


  昼食は担当者(陽蕗子、任せたぜ!)が全員分をコンビニで調達します。

  列車内で精算するので、小銭を用意すること。

  飲み物・おやつは各自で持参。

  

  合歓森駅まではチャリで行きます。暖かい軽装でお越しください。

  リンリン隊員は、青深のハーレーのタンデムシートへ。

             (ウソ。チャリに二人乗り)


  ☆ 変更希望や緊急連絡は、誰かのスマホへ。

    体調のわるいとき、ママにバレたときも遠慮無く。


  * * *

 

 三人のアドレスは、はじめからノートの自己紹介欄に書いてあった。

 すぐにパソコンから返事を一斉送信した。


  * * *


 <件名> リンリンです。


  青深さま  陽蕗子さま  時雨さま


  パンダの秘密メモ、読みました。

  ありがとう。すごくうれしかったです。

  まだ、夢のようです。


  こんなに甘えてしまって本当にいいのかなと思います。

  申し訳ない気持ちでいっぱいです。

  ほんとうにありがとう。

  いつかきっとみんなに恩返しをします。

 

  葛籠谷に行きたい理由は、土曜日に会ったときにお話しさせて下さい。

 

  これからは、このアドレスへ連絡をください。私のパソコン用です。

  携帯電話は解約してしまったので。


  毎日ノートを持って来てもらうのは大変だし

  そのほうが母にも気づかれずに済むと思います。


  22日は、どうぞよろしくお願いします。

  

            心より感謝を込めて 白銀 林

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る