<Diary 5>

〈白銀 林の日記〉 十月十六日(日) つづき


 今日のママはおかしかった。


 まるで病気なのはわたしではなくて、ママみたいだった。


 あの子たちの目には、どう映っただろう。


 今頃、気持ちの悪い家だと噂されているだろうか。


 明日はもう来てくれないかもしれない。


 交換ノートの表紙は、ミュシャが描くような繊細な花の絵柄だ。


 最初に、三人の自己紹介が書いてある。


 次の頁は、今日の日付になっていた。




* * *


  白銀さん、こんにちは。


  本日の記入担当の、桐原キリハラ 時雨シグレです。

 

  昨日、あたしは埴輪山高校の敷地のなかで子猫を拾いました。

  真っ白でフワフワで、めちゃめちゃ可愛いです。


  あたしが飼いたいと言ったら、権平ごんだいら先生が放課後まで預かってくれました。

  あの先生は顔に似合わず、かなりな猫好きです。

  猫をみているときは、語尾が「にやあ」になります。


  猫が気になって、あたしは一日中授業に身が入りませんでした。


  白銀さんは猫は好きですか?


  陽蕗子は猫派で、青深は犬派です。

  あたしは超猫派。犬も好きだよ。ハシビロコウにも興味あります。

  

  あたしも青深も陽蕗子も、白銀さんと仲良くなって

  いろいろおしゃべりしたいです。


  あたしは教室では、わりと浮いてるタイプですが(汗)

  幼なじみの青深と、入学以来仲良しの陽蕗子がそばでフォローしてくれます。

  ほかの同級生たちも、おおむね好意的です。

 

  だからね、 白銀さんも、はじめは緊張するかも知れないけど

  あたしたちがいるから大丈夫ですよ。


  学校に来られない日でも、このノートで毎日おしゃべりしましょう。


  これから、よろしくね。


* * *




 ――桐原時雨は優しいひと。


 林は、ノートを抱きしめて泣いた。

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