第三章 ファーストコンタクト
第三章 <Ⅰ>
紅葉した
コスモスの群れ咲く庭越しに、白い二階家が見えた。
チャイムに応えて玄関扉を開けてくれたのは、青いギンガムチェックのエプロンをつけた小柄なお母さんだった。突然やってきた女子高生に驚いたようだが、あたしたち三人が林の同級生とわかると、ふっと頬を染める。
「ありがとうございます。わざわざ来ていただいて……」
お母さんは品の良い仕草で頭をさげた。やわらかそうな栗色の髪をさり気なくシニヨンに結んでいる。
「いま、娘は体調がわるくて寝ているんですよ。申し訳ないのですけれど、お目に掛かれないんです。ほんとうにごめんなさい」
可憐なお母さんだなあと思った。
「そんな、いいんです」 「突然来ちゃって、すいません」 「失礼しました」
あたしたちは、あわてて口々に謝った。
それに会えないときのために、
「それでは、これを林さんに渡していただけますか」
これから、林とあたしたちを繋ぐ<交換ノート>だ。
メールよりラインより、手書きの文字は気持ちが伝わると思ったんだ。
「その日、学校であったこととか書こうと思ってます。林さんからも、私たちに伝えたいことがあれば、自由に書いて欲しいんです。書かなくてもまったく構いませんし、あまり重く考えないでください」
ノートを抱いたお母さんは、うるんだ目を瞬かせて、あたしたちにまた頭を下げた。
「ありがとうございます。あの、どうぞ上がってくださいな。いまお茶を――」
「いえ」 青深が丁寧に断った。
「また明日、このノートを取りに来ますから。これから、毎日来ますから」
あたしたちは揃ってお辞儀をして、玄関を辞した。
何気なく振り返ったとき、二階の窓のカーテンがわずかに揺れた気がした。
――また明日ね。林。
あたしは心のなかで手を振った。
門から玄関までのアプローチは、薄紫のラベンダーに縁取られていた。
庭先には、コスモスや
「きれいなお庭だね」
「ああ。いい香りだ。癒やされるな」
青深がうなずいた。
「白銀さん、出てこなかったね」
さっきまで楽しげだった
「気にするなって。まだはじめたばかりじゃないか」
青深がその肩をポンと叩く。
「これから毎日だぞ。覚悟を決めろ!」
「うん!」
うさぎ娘が
真っ先に反応した青深が、素速く上半身をひねる。
「おおっ?」
「どうしたの?」 「え、なに?」
一拍遅れて、陽蕗子とあたしが、もたもたと振り向いた。
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