<Diary 4>

〈白銀 林の日記〉 十月十六日(日)


 午後二時過ぎ、いつものように微睡まどろんでいたら、玄関先の人声に目が覚めた。


 驚いたことに、高校の同級生が三人来て、母と話をしていた。


 わたしは階段から、玄関ホールの会話に聞き耳を立てた。



 イスルギさんは声が大きくて、男言葉で歯切れ良くしゃべる。


「なんでも力になる。遠慮するなって伝えてください」


 ありがとう。でも。どうやって力になってもらえばいいのか、分からないよ。



 ユキエさんはとても綺麗な声。鈴をころがすって、こういう声をいうのかな。


 ちょっと舌足らずな子どもっぽい感じの言葉遣い。


「一緒にお弁当食べたいと思ってるんです」


 ありがとう。わたしには夢のようだ。


 どうすれば、そんな世界に行けるのだろう。



 三人目の人が「キリハラです」って名乗った。


 まさか、この人が桐原時雨?


 いますぐ階段を駆けおりて、「わたしは、あなたに会いたくて登校したんだよ」と言いたくてたまらなくなった。



 桐原さんは、言葉を丁寧に並べるように話した。


「あたし、入学式で林さんの後ろの席にいたんです。


 今まで来なくて、ごめんなさい」



 てのひらで口を押さえた。


 だって、泣き声が洩れそうになったから。


 わたしはあなたを知らないのに。あなたはわたしを覚えていてくれたの?

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