第23話 部隊一丸
九月になり夏休みは終わる。
しかし稲刈りから戻ったあと補講に参加していたので、新学期だからと新鮮な気分になることはなかった。それでも、学校に戻ってから何も無ければお爺さんから聞かされた話のことで悩み続けそうなので、慌しいぐらいでよかったのかもしれない。実際、穂見月もあれから倉庫での話題には触れないし、遺跡のことが聞きたくても出所を尋ねられたら困るので誰にも相談できないでいた。
中旬、関所を越え、お隣の相模国へ人員輸送車で入る。四回目になる現場だ。
国に入ってからも結構走るんだなと思っていたら、降りてからが本番であった。急勾配の場所が少ないとはいえ山間を進み、人里からはかなり離れているところまできていた。
「今回の相手は手ごわいかもしれない」
堀田先輩は、油断させないように脅かそうとしているのだろうか?
「休み明けにはそれぐらいで丁度いいぜ!」
調子がいい長三郎のその手にある槍は、簡単な輪状の装飾が数本入った新しいものになっていた。夏休み中、松下先輩と二人でやっていた訓練で認められたようだ。
武器の格も上がり、何よりこれからは団結力が期待できるのだから、手ごわい敵を試すのも面白そうだと俺まで浮かれてしまう。
「きたきた、あれあれ」
松下先輩が言うので目を凝らすと、小高くなった丘を越えるように進んでくる何かが見る。
「人? のような」
輪郭からそう思い、俺は口にするが明らかに違う。
一体、二体と、どんどんこちらに滑るように向ってくるが、動きがめちゃくちゃ遅い。
「気持ち悪いぞ」
霞はまだはっきり言う余裕があるが、穂見月は体が引けている。
それは肉片や血の後が残っているかは分からないが人骨であり、服が布きれのように残っている者や部分的にではあるが鎧を着ている者、また刀まで持っている者もいるので、合戦などで亡くなった者の屍ではないかと想像できる。しかし大規模な合戦など最近は聞いた事が無いので、そんな昔の物なら骨だってこんなに綺麗に残っているものだろうかと疑問だ。どちらにしても屍は勝手に動くものではないので、遺跡の力ってやつで動いているとしか考えられない。
だから今、堀田先輩に聞いてみることにした。
「ひょとしてこの辺りに、遺跡って呼ばれるものがあるんじゃないんですか?」
「その通り。この辺りの地形は丘の連続なので遺跡の位置が分かりづらいんだけど、近くにあるはずだよ。どちらにしてもこいつらを倒すしかない。動きが遅いとはいえそこそこ強く囲まれると厄介だから、正面から総攻撃でいこう」
俺たちは迎え撃つように横一列になると、穂見月を後ろにして一斉に攻める。近づき剣と剣が交わる距離になると相手も振り下ろしてくるのだが、その剣は遅くない。
「早く動けるのかよ。そりゃ、骨だけで移動できる時点でおかしいけどよ」
長三郎は文句を言っているが、槍を振り回し容赦なく敵をバラバラに打ち砕いていく。突かずに回し、広い間合いでガンガン砕く。新しくなった槍を見せびらかすように撃破しながら進む長三郎と俺たちは、屍を一掃しながら丘の高いところまで自然に上っていた。
するとここから、大きな石が不自然に集まっていると分かる場所が、まだ遠く二つほど先の丘だが確認することができる。
「堀田先輩ひょっとして、あれが遺跡ですか?」
石、一つひとつもそうだが、何も無い平原のようなところにそれが固まっているのだから人工物なのは間違いない。だが俺は、遺跡は建物だとばかり思っていたので意表を突かれた感があった。
「うん、石は入り口を囲っているだけで、中心に洞窟があるから遺跡は洞窟の方なのかな」
これを聞いて、洞窟なら中を見てみたいと思ったし、ひょっとしたら行くのかなと期待もしたけれど、それどころではなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます