第2話
目の前にある白くやわらかな姿に見とれ、漂ってきた甘い香りに思わず唾を飲む。はやる気持ちを押さえながら、そっとそれに口をつけた。
口の中一杯に、生クリームの味が広がった。俺は今、自宅で一人クリスマスケーキを食べている。
家に苺の乗った生クリームのケーキ。それが1ホール丸ごとだ。
みんなは考えた事が無いだろうか?普通は何人も出切り分けて食べるホールケーキ、それを全部一人で食べられたらと。
俺は子供のころ何度もそれを夢見ていた。クリスマスが来るたびに、そんな贅沢ができたらと想像した。
けれどそれは子供には喫して叶える事の出来ない夢だった。どんなにケーキが美味しくても、子供の胃袋ではまずそんなに入らない。もし入ったとしても、そんなことは親が許しはしないだろう。
だが大人になった今なら違う。胃袋も大きくなり、何をどれだけ食べようと誰にも文句言われることは無い。
そう、一人でホールケーキを食べる。これこそが大人にしかできないクリスマスの楽しみ方だ。今となっては毎年恒例の楽しみとなっていた。
更に一口頬張ると、甘いクリームと生地にサンドしてある苺の酸味が絶妙なバランスで互いを引き立て合っていた。ケーキを買う際に、この生クリームケーキにするか、それともチョコトリュフのケーキにするか散々迷ったけれど、こっちにして正解だった。
こうして至福の時を過ごしながら、クリスマスイブの甘い夜は過ぎていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます