クリスマスイブの甘い夜
無月弟(無月蒼)
第1話
クリスマスを楽しめるのは子供の頃だけ。かつて俺はそう思っていた。そう思う以前の、本当に子どもでいられた頃は、クリスマスはとにかく楽しくて仕方がなかった。
街のいたるところにツリーが飾られ、この時期だけのどこか特別な雰囲気があった。
そして一番の楽しみは、何と言ってもサンタクロースだ。世界中の子供たちに幸せを運ぶその存在を本気で信じていて、朝起きた時枕元に置かれたプレゼントに大はしゃぎしたものだ。
そんな俺がサンタの正体を知ったのは、親から教えられたわけでも友達から聞かされたわけでも無く、某国民的に有名なネコ型ロボットのアニメを見た時だった。
クリスマスが間近に迫った頃に放送されたそれでは、主人公の眼鏡の少年が親からプレゼントとして問題集を渡されていた。サンタクロースでなく親から。
戸惑う俺の気持ちなんて知るはずもなく、テレビの中の彼はある決定的な一言を言った。
「サンタなんて本当はいないんだ」
眼鏡の少年はプレゼントの内容にショックを受けていたが、それを見た俺のショックはそれ以上だったと思う。
こうして俺は、ずっと信じてきたサンタクロースの正体を知った。
その後そのアニメはネコ型ロボットの秘密道具を使い、最後は笑顔で終わっていたけど、残念ながら俺が心に受けた衝撃を消すことはできなかった。
こうして俺は一つ大人になり、クリスマスを本当に楽しめるのは子供だけだと思うようになった。
「恨むぞ青ダヌキ」
あれからもう二十年。今日はクリスマスイブだ。
すっかり大人になってから迎えるクリスマス、果たしてそれは楽しめないのだろうか?
いいや違う。
大人になった俺はかつての自分に言ってやりたい。大人には大人にしかできないクリスマスの楽しみ方があるんだと。
今夜は最高に甘い夜を過ごすんだ。
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