らぶトモ 第2.5話 【準備するよ】

就業のチャイムがなり、勢いよく教室のドアが開きました。

ずかずかと、堂々と、躊躇いなく黒板の前の教壇へ向かうのは、

ロングの黒髪、下だけ縁がある細いレンズの眼鏡、透明感のある肌色だが病弱には見えない、

パッと見キャリアウーマンのような教諭、奈々のクラス担任、港区美都子みなとくみやこ女史が、来ました。

「はいはいみんな席について〜。帰りのHRやるわよ〜」


HRホームルームは、いつも通り何事もなく、明日の連絡、宿題のプリントなどを伝えてもらって終わります。


「というわけで、今日はこれでおしまい。では挨拶〜」

 男子委員長が呼ばれなくても帰りの挨拶をみんなに指示します。

「きり〜つ<起立>、れい<礼>、さよなら〜」

 全員で「さよなら〜」と挨拶して各々で帰っていきます。


「あ〜そうだ、木村〜ちょっといいか?」

「は〜い、なんだろ?泉水ちゃんちょっと待っててね」

「うむ」

「な〜に、みっちゃん」

「先生をみっちゃんと呼ぶんじゃないと何度も言ってるだろ?」


 私は、みっちゃん・・・ちが・・・港区先生からびっくりすることを教えてもらった。

 それは・・・。


「うわ〜〜ん、泉水ちゃ〜ん!大変だよ〜!」

「どうした?そんな大きな声だして。大きいのは、その大きな胸だけで十分だぞ?」

「さりげなくヒドい事言ってるね泉水ちゃん」


 話してるのは、山縣泉水やまがたいずみちゃん。

 小学校4年生の時に転校してきて私の隣の席が空いてて、教科書とかクラスのこと、学校のこととか色々お話して

 いくうちに、意気投合して、もう親友といっていい関係です。


 泉水ちゃんは、140cmくらい。

 ちっちゃくて、綺麗な髪、美人さんで、すっごく落ち着いてて、同じ年なのにお姉さんみたいなんです。

 奈々は、お兄ちゃんの次に泉水ちゃんが大好きです。


「それで?どうしたのだ、話してごらん」

「あのね、今日お兄ちゃん角田先生に、生徒指導室に呼ばれてるんだって。

 だから一緒に帰れないって伝えて欲しいって頼まれたみたいなの・・・泉水ちゃんどうしよう?」

「どうしようって、その言葉通りだ。大人しく帰るしかあるまい」

「でもでも、あの角田先生の教育的指導だよ?怖いよ〜。お兄ちゃんどうなっちゃうのかな?」


 お兄ちゃんか弱いから、角田先生の筋肉でなんかやられちゃうよ〜。その何かってわかんないけど。


「そこまで心配せんでもよかろう。いくら筋肉教師の角田先生でも、問題を起こすような指導はせんだろう。

 というか、奈々の兄上が生徒指導室に呼ばれた理由はなんなのだ?」

「先生の授業中に寝ちゃったんだって。お兄ちゃん疲れてたのかな」

「自業自得ではないか」

「でもでも、居眠りでわざわざ生徒指導室に呼んでお説教しなくても良くない?」

「それは最近の学校の配慮だ。怒られているところを皆がいる前ですると晒し者扱いとして、教師側が

 訴えられるらしい。

 高校は義務教育の場ではないが、教師はあくまでも仕事中だ。寝てしまっては、礼節にあたるのに、

 それをわからんのが多いと聞く」

「泉水ちゃん、難しいからその辺で・・・。奈々頭パンクしそうだよ」

「ああ悪かった。ちと言葉が過ぎたな。

 では話題を変えて、奈々はこれからどうするのだ?」

「わかんないよ」

「よく考えるのだ。兄上は指導を受けてどうなる?」

「すっごく落ち込むと思う」

「そうだ。精神的にも肉体的にもな」

「そうだね」

「そんな兄上を見て奈々はどう思う?」

「可愛そうだなって」

「では、妹として、兄上に何ができる?」


 落ち込んでるお兄ちゃんに奈々ができること・・・。

 よ〜く考えよ〜。お兄ちゃん大事だよ〜。

 ポクポクポク【シンキングタイム】ちーん!【閃きました】


「思い付いた!!」

「ようやくわかったか。兄上を癒せるのは、奈々しかおらんのだ。

 兄上が疲労困憊で帰ってくるのだから、奈々が為すべきことは・・・」


 泉水ちゃんってすごく頭がいい。奈々が思いつかないことをいっぱい教えてくれます。

 この後、泉水ちゃんと相談して、お兄ちゃんを励まして癒してあげる準備をするために急いで帰りました。


「お兄ちゃん、本当は指導室で待っててあげたかったけど、お家で待ってるからね。

 目一杯疲労して困憊してきてね!奈々があれとかこれとかしてあげるよ〜!」

「疲労困憊してこいっていうのは、どうかと思うぞ」

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