らぶトモ 第2話 【兄として】

俺は、奈々にとってきちんとお兄ちゃんをできているのだろうか。


 窓の外を眺めながら、ふっとそんなことを考えることが多くなってきた。

それはクラスの中にも妹がいるやつもいて、兄としてのスキルは意識しているそうなのだ。

例えば、勉強を頑張る、スポーツを頑張る、家の手伝いを頑張るなど家庭の状況で様々だ。


クラスの連中曰く、

【小学生低学年まではそれなりにあれやこれや世話をして頼られるが、高学年になるにつれ、知恵も付くし周りからの目も気にしだして逆に、あまり頼られなくなった】というのだ。

 ということは、〈お兄ちゃん離れ〉は大抵起きることなのだ。


 俺はというと幼少期で、

「はい、お着替え終わり〜。お日様にあたった服は気持ちい~ね~」

「うん、気持ちいいね〜、えへへへへ」


 もうその笑顔たるや、ぱああああってお花が咲くわけだよ。たまらん。1歳しか離れてないとはいえ、妹にメロメロ

だったわけですよ。


 保育園に行ってた時は、もじもじして体を左右にクネクネしながら、

「 ねえおにぃちゃ〜ん。あのね〜・・・そのね・・・」

「ん、なんだい?」

「奈々のこと・・・しゅき?」

「うん好きだよ」

「奈々もおに〜ちゃのこと、しゅきしゅき、だ〜いしゅき〜」

とか、やり取りしてた。


 小学校にあがった時は、

「お兄ちゃん、おかえり〜」

「おっとっ、ははは、そんなに抱きつくなって」

「ねえお兄ちゃん、これからご飯にする?お風呂にする?」

「ちょ、おま、そんなのどこで覚えたんだ?」

「クラスのお友達が教えてくれたよ〜」


 な、なんというおませさんな友達だ!けしからんぞこのやろう!(心の中でありがとう!)


 中学に進学しても

【お兄ちゃ〜ん。奈々ね、今日海老マヨ食べたいな〜】

「ああ、いいぞ。特製のやつ作ってやるからな」

【わ〜い!お兄ちゃん大好き〜〜♪】


 という具合に、兄離れなど全く感じないのだが・・・。奈々は精神年齢が低いのか?

 少しは、「ええ?またかよ?ったくしょうがねえな〜」くらい言って、おねだりするのは良いが、

そう簡単には願いを聞いてやれないんだぞ、感謝しろ的に思わせたほうがいいのだろうか。しかし、奈々が

しょぼ〜んとする顔は見たくない。俺って甘いよな。【頼られる】のと【使われる】では大きく違う。

奈々は実際どっちで考えてるんだろうか・・・。後者の方だったらマジ泣くな俺・・・。


 もうこの時点で、俺の兄としてというか、威厳も何もないな。いや!これからでも遅くないはずだ!

奈々に尊敬されるようなことを身につければ奈々も、


「お兄ちゃんにお料理教えて欲しいな〜。

だって朝ごはん作ってあげたいし・・・えへ」

「ねえお兄ちゃん、勉強教えてくれる?」


 と、なるはずだ!そうだ、俺はそうするべきなのだ。

 がんばれ俺!兄として!兄として!


・・・・・。


「ねえお兄ちゃ〜ん、起きてほしいなあ〜」

 ん?奈々の声が急に野太い声になったな?風邪か?

「ねえお兄ちゃ〜ん。起きてくれないなら、チョークスリーパーしちゃうよ〜」

 チョークスリーパー?奈々いつからそんなプロレス技なんて覚えたんだ?

「もうしょうがないな〜。なかなか起きないから、別の意味で寝かせてあげるね?」

 奈々のチョークスリーパーなら、めっちゃ気持ち良さそうじゃないか。あ、あの、けしからん膨らみと細い二の腕の

感触ならウエルカムだ。

「それなら、存分に味わうがいい!!」

 へ?

「とりゃ〜〜〜!!角田必殺の《スーパーチョークスリーパー》」

「グオオオ!、ぐ、ぐるじいいいいいい!!」


 まずいことに、この学校の最強で最悪、筋肉大好き、鍛えあげた筋肉をいつも見せびらかす、マッチョサイエンティストの異名を持つ、角田一角かくだいっかく教諭の授業中に居眠りをしてしまっていたのだ。


「おはよ〜木村大吾!!よく眠れたか?」

「うぐ、ぐうううう」

 先生!チョークスリーパー完全に決まってる!苦しくて声出せない!!


「私の素晴らしい筋肉の披露中・・・じゃなかった。

 素晴らしい筋肉の授業中に寝るとは良い度胸だ!そのたぐいまれなお前に敬意を払い、

放課後、生徒指導室で特別授業をしてやるからな〜〜〜ガハハハ!」

「あの〜ティーチャーKakuda・・・」

「ん?なんだどうした平等院太助びょうどういんたすけ」

「meの親友、大吾は、答えられませ〜ん」

「どういうことだ?あ・・・ガハハハ、やりすぎたか〜〜」


 俺は、もう一度夢の中へと誘われた・・・っていうか気絶ね。

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