らぶトモ 第1.5話 【お兄ちゃんは148cm】

ピピピピ・・・・ピピッ、〈カチ〉っと目覚ましの音を止めるスイッチを押して、私は目覚めます。

「ふあああ・・・眠い・・・」


 中学校に進学してから私は、朝が苦手で覚醒するのも遅い。

幼い頃からお兄ちゃんにずっと起こしてもらってたから、起こされた時の寂しさがイヤなのです。

お兄ちゃんに起こしてもらえると、すっごく嬉しいし、おしゃべりしながら覚醒していくから楽しくて

寝起きが悪いなんて1回もなかったんです。


 だって、お兄ちゃんの起こし方はすごく素敵なのです。

 初めは優しく【奈々〜、朝だぞ〜。起きような〜。起きたら一緒に朝ごはん食べて、一緒に保育園に行こう】っ

て言ってくれる。【一緒にって】2回も朝から言ってくれるなんて嬉しすぎるよぉ。えへへ。

 それで、お兄ちゃんに摩ってもらいたいから、ワザと起きれないフリして「眠い〜」ってぐずって、

【ほら奈々〜。起きろ〜。起きないと、くすぐっちゃうぞ〜】

もうそんなこと言われた日は、心の中でキャアキャア言ってた。だってお兄ちゃんと仲良しできるし、

かまってくれてるって、奈々のこと気にしてくれてるって、すごく安心できたから。


でも・・・。今は・・・。


【奈々はもう中学生なんだから、1人で起きれるようにならないとダメだぞ。それにこれからは、部屋も別に

あるわけだからな。大人への第1歩として慣れていかないとな】


 な、なんで?お兄ちゃん、奈々のこと嫌いになっちゃったの?なんで別の部屋で寝るの?兄妹なのに〜!って

ワガママを1週間続けてしまった。

 最後は、お兄ちゃんが困ってる顔をずっと見るのがイヤだったから、泣く泣く承諾した。


「やっぱり、録音式の目覚まし時計にしたいよぉ〜」

【え?そんなの、無、無理〜〜!!恥ずかしいって!!】


 もう!お兄ちゃんは〜〜〜!なんで恥ずかしがるの〜〜?奈々はお兄ちゃんの声で起きたいのに〜! 

【さ、愛しの愛しの奈々姫。朝だよ。さあ、今日も朝の挨拶のキッスをしてあげるから、起きてごらん】

これのどこが恥ずかしいのかな?その後に、奈々が照れながら起きる姿とか想像してくれないのかな?

俺の声で、爽やかに目覚めたんだな〜とか、兄として妹の願いを叶えるのは当然だとか思ってくれても

良さそうなのにな〜。


 まあ、またいつか、同じ部屋でお兄ちゃんと一緒に寝られる日を取り戻さないとね。

泉水ちゃんに相談しようっと。待っててねお兄ちゃん!!きっと奈々はお兄ちゃんと幸せになってみせるからね!!


コンコンとドアをノックする音がした。


「お〜い奈々〜。起きてるか?」

「あ、お兄ちゃん、起きてるよ〜」

「じゃあ先に、リビングに行ってるぞ」

「うん、すぐ行くね〜」


 さて、パッと着替えてお兄ちゃんのとこに行こうっと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る