③かりむーの海

わたし達は今海に来ている。海とは言っても本州と陸続きの土地じゃない。遠郊の田舎からさらに離れた孤島に居る。毎年陸の方に帰省しているわたしの一家だけど、今回は一泊二日でレジャーを楽しむということになった。

ここに来るまでは人四人ほど乗れる個人船を使った。メンバーはわたし、かりむー(友達)、母親、親戚のお姉さんのパーティ。島の中心には面積の半分近くを占める海の家があり、わたし達はそこに泊まることになっている。建物に入り、直ぐ側にある物置部屋に荷物を置いた後水着に着替えて、母親の見守る中かりむーとお姉さんとで海辺で遊ぶ時を送る。

しばらくすると母親は室内の奥の方で休むと言って去っていった。お姉さんは「私はまだまだ現役だぞぅ~」と呑気に砂浜で遊んでいる。

わたしとかりむーは一通り遊び尽くして、建物の階段際で座って海を眺める。ブルーハワイのシロップを撒き散らしたみたいな海色と島を取り囲む砂浜が、シアン色の空の下で泳ぐ。追いかけっこの足跡があちこちに残っている。

「たくさん走り回って、少し疲れちゃった」

「本当ね」

ざぁーと波が押し寄せ、飛沫が散る。塩気の多い潮風が吹いて、わたし達をなびかせる。

暇を持て余したわたしは、外に向かって意味もなく足をバタバタさせる。交互にゆっくりとリズムを刻んでいたら、かりむーもわたしに合わせて足を振り出した。たーん、たーん、と四本の足が音を立てず上下する様は、二人でピアノを弾いているようで楽しい。

温い波風の中、何だか心地好くなってきて、うとうとし始める。隣を見ると、かりむーは前を直視して眠気のなさそうにしている。折角の海だから一秒でも多く眺めていたいのかもしれない。じゃあわたしも起きてなきゃ、そう思って頬をつねる。それに気付いたかりむーは腰の側に乗せてた手を伸ばして、わたしの触れていない方の頬をつねってきた。

「えい」

笑いながら言って、かりむーの指がわたしをぐにぐにする。

「うわっ、うわにょにょ」

軟体動物みたいに揉みしだかれた口元から宇宙語が放たれる。そんなわたしを見て、かりむーは満足そうに目尻を落とす。かりむーのこんなお茶目なところが好きだ。

しばらくの間、今度はわたしの番と言ってかりむーの頬をぐにったり、お返しと称してかりむーがお腹を揉んできたりして時間を潰した。しかし結局体から溢れてくる眠気に耐えられず、寝てしまった。


起きると膝にバスタオルが掛けられていて、肩を温かい感触に預けていた。何かと思い横を見るとかりむーがわたしと同じようにぐぅぐぅ眠っている。何だかりむーも寝てるじゃんと突っ込んで、身体を揺らそうとして止める。そうだ、この間に計画を練ろうと思い立つ。かりむーを寝かせたままスタンダップする。空にはもう太陽がない。

忍び歩きで建物を覗き込む。中にはきちんと母親とお姉さんがいて、コーヒーブレイクに勤しんでいる。大人の休日という感じだけど、べらべらと会話に夢中でわたし達子供のことは当分眼中になさそうだ。チャンスと手を握り、その場を引き返した。

わたしの計画。海に来た最大の目的。

それはかりむーと海辺でえっちすること。

大人で大胆な、至福の夜を体験すること。

以前からヌーディストビーチの類には興味あった。野外でするえっちはどれくらい気持ちいいんだろうって。その為には決して親達に見つかってはいけない。子供だけの秘密の、大人の遊び。でもいいでしょ、大人達だって秘密にしてるんだから。

図らずも昼寝で上手く体力回復できたし、あとはかりむーを起こして、襲いかかるだけ。

さぁ、今晩が山場だ。

海だけどね、あは。

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