第4話

「下界へ向かえ......ですか?」

「そう、下界」


 別天神が一柱アメノミナカノヌシが穏やかな顔で私にそう告げた。


「お言葉ですが、なぜ私に? ご存知だとは思いますが、私も多忙の身ゆえ......ほかの神々では差し支えることでもあるのでしょうか?」


 神の身でありながら身分が位がと言う気はないが、私はこう見えても高位な存在だと自負している。


「ん〜......気持ちはわかるんだけど今回ちょ〜っと特殊なんだよね......」


 頬を掻きながら困り顔をするアメノミナカノヌシ。


「特殊とは?」

「それがね出てきたらしいんだよ......」


 出てきた? 何が......と思考を巡らすと、そこで私はハッとする。そんなの一つしかないに決まってるではないか。


「......便通の話ですね。わかりますよ。至急海草を用意させましょう」

「いや違うからね!? あー確か四百、五百年ぶりかな?岩戸からほら......」


 と聞いて思い当たりものは一つしかなかった。


「姉様が!?」

「うん。そうみたい、だから様子を見てきてほしい。あと少し気になることがあってね......」


 アメノミナカノヌシの話しをまとめると

 ①姉様がヒキコモリをやめて出てきたから様子を見てこい。

 ②スサノオの退治したオロチの気配がするのでこれも見てこい。

 ③下界で神が消失しているから調べてこい。

 ということだった。


「なるほど分かりました。すぐ身支度を整え次第すぐに向かいます」

「よろしくね〜」


 アメノミナカノヌシの穏やかな顔が私を見送っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る