第2話
夢を見ていた。冷たいはずなのに、どことなく温かいそんな心安らぐ揺籃。とても心地よくてどこか懐かしい。そこで僕は最期を──。
「──て」
目が開く。どうやら最期を迎えていなかったようだ。
「起きて」
聞きなれた声だ。
「......和田?」
目の前にスクール水着を着用した少女が佇んでいた。
和田つつじ。髪はショートといったところだろうか? ボブとかベリショとかミディアムとかよくわからないからショートと言うことにしておく。整った顔立ちに健康そうな短髪が今日もよく似合って照る。学校の同級生だ。。
「流れ着いてきた」
海の方を指して和田が、そう呟いた。
どうやら和田に助けられたらしい。
しかし、唇が少し暖かい気がする......これはもしや。
「初めてを......あなたにあげた......」
和田の顔が仄かに紅い。唇にその細い指を当てていた。
「和田......お前......そこまでして俺を......」
「? 水を吸うナマコを口に入れて、お腹を殴って水を出した。人を殴ったのは初めて」
ふんす、と何故か嬉しいそうに鼻を大きくして喋る和田。
クラスメートの腹パンヴァージンを頂くと同時に、俺のヴァージンも汚されてしまったようだ。何だったんださっきの思わせぶりなの。
今後、初チューの相手を尋ねられたとしたら、赤面して「ナマコです♥」と答えなくてはならない人生を歩んでいく十字架を背負って生きていかなければならないのか。
「ところで......」
訝しげに和田が尋ねる。
「なんで裸なの?」
時が止まった。
「......?」
「! ......死んでる」
すべてを思い出した少年は、灰になった。
噂をされているとすぐに気づいた。まあ、当たり前ですね......なんせ! 神(重要)ですし!
少女は自身に満ち満ちた様子で商店街を闊歩していた。
(近頃の人々は、信心があまりないと思っていましたが、神を認知し恐れおののく程度にはわかっているようですね......。さあ! さあ! 誰か話しかけるといいですよ!)
少女とその周囲には、明らかに壁があった。無理もない。和装の少女は今、己の後光でピカピカ光っている。まあ、そこまではいいだろう。少女は肩に大きめのデコられたラジカセを担いでいた。
爆音を垂れ流す少女を見て、そこにいる人々は皆思っていた。どう見ても、やべーやつだ!と。
「ママー。前パパとあったホテルみたいな人がいるー!」
「見ちゃダメよ。あと、あの人はもうパパじゃないのよ......」
「あの時のママ、凄かったよー。あなた......その女だれよ! 違うんだ? 何が違うのよ! 間違っていいのは、雨の日の天気予報だけっていつも言ってるでしょ! って、大怪獣のバトルみたいだったよー」
「そうね、人はみんな怪獣なのよ」
街は、今日も平和だった。
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