冒涜との邂逅;pre
超法規的措置である
まだ初夏になりかけという時期なれど、人類の建造叡智の代償と地理的条件のせいで大気温度は真夏日を優に超えていた。行き交う人々も心なしか速足でこの灼熱地帯から誰よりも早く脱しようと尽力しているようにも感じる――――――
――――――止めだ、止め。こんな状況描写をしたところでクソ熱い気温が下がることも、うるせぇ人ゴミ(悪意は一切ない、神に誓って)がなくなりもしないのだから。ついでにキレイな文体も廃止だ。
俺もとっとと用を済ましてトッテモスズイヘヤ《自室》に帰らねば。
カジュアルな海外古着屋やすいーつ(笑)が建ち並ぶ一般人区画、額に脂汗を浮かべながら陳列された基盤やコンデンサを凝視している危ない人が闊歩するマニア区画と、奥へ進むごとに混沌指数が上がっていく屋根付き商店街を突き進む。
この辺まで来るともはやブラックに近いグレーな方々が闊歩していて、一見さんにはちと厳しい修羅の街と化す。
カミニゴキョウミアリマセンカザダンカイコナイ?
はいはいスル―スルー、生憎と無神論者なんでね。
信心も神への誓いも露ほども持ち合わせていないのでね、もっと何かにすがりたそうな奴に声を掛け……っと、今の俺がそう見えるのか。なるほど確かに生涯で自分の作り上げたものを一瞬で文字通り全て喪った人間などそうはいない。いかに自分が復帰しつつあると自覚していても、客観という判定の下では異なる値が返ってきても不思議ではないか。
あ、着いた。
特に利のない思考を回しながらこの一本道を進んだ末、眼前に建つ三階建ての雑居ビルにたどり着く。入り口横の看板最上部に書かれている、『K出版』の事務所があるフロア数を横目に、年季の入ったエレベーターの上ボタンを押す。
「最後の置き土産、ねぇ」
在りし日の旧担当の言葉を反芻しながら、少々乱暴な加速度の小箱で、俺はその置き土産へとたどり着きつつあった。
――――――まァ文字通りの
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