第23話三度カミサマ

 気がつくと、何もない白い空間に居た。


 カミサマのいる場所に、また飛ばされたらしい。今までと違うのは、俺の傍にシロが居ないことである。


「随分と派手にシロを壊したな。おかげで、あいつだけ早めに修理に出しておいた」


 どうやら、シロは無事らしい。


 俺は、それにほっとする。


「……元英雄殺しに会ったぞ」


 俺はカミサマに告げる。カミサマがどの程度俺たちを監視しているのかは分からないが、下手に黙っていて不信感を抱かれるのは避けたかった。


「ああ、見ていた。そんなに気にしなくて良い。あれは賢いから、世界を渡り歩ける英雄の一人を連れて世界を巡り巡っている。一つのところに長く滞在しなければ、英雄も英雄殺しもさほど害にならない」


 世界を渡り歩ける英雄というのは、モニカのことだろうか。彼は土から武器を作り出す魔法のようなものを使っていたが、やはりそちらはモニカが元々持っていた能力なのだろう。そこに女神が、世界を渡る能力を付け足した。


「だったら……どうして最初からその手を使わないんだ?」


 俺は、カミサマに問いかけた。


 殺さなくてすむ方法があったのである。


 カミサマがその手を使えば、俺は誰も殺さなくてよくなる。


「無理だ。まず、私には人にスキルを授けることはできない。故に異世界を渡り歩くような便利な英雄を作り出せない。さらに、世界から世界へと移動させる人数にも限界がある」


 だから私は英雄殺しを作り続ける、とカミサマは言った。


「女神は……何を考えて世界に英雄なんてものを送っているんだろうな。あんなの不幸な人間を増やすだけのシステムだろ」


 リーシャの世界では、英雄が害となっていた。


 そして、その娘のリーシャすらも苦しんでいた。


「女神は、私とは違って人間が大好きなんだ。でも、人間を信頼できない。試練や困難を乗り越えられないと思っている。だから、過剰なスキルを持った英雄を送り込んで世界や人間を救おうとしているのさ」


 止められないのか、と俺はカミサマに訪ねていた。


 止められない、とカミサマは言った。


「今はお前と話すために人の姿を取っているが、私たちの本質は現象に近い。だから、殺したり、やっていることを止めたりするのは無理なんだ」


 女神は英雄を送り続け、カミサマは英雄殺しを作り続ける。


 そういう不毛な作業が、ただ続いていくだけ。


「クロ。次の世界に行け。お前は、なかなかの幸運のようだが、次の世界は必ず救わないとお前は一人で英雄殺しをやる羽目になるかもしれないぞ」


「どういうことだ?」


「シロの故郷に英雄がいるからだ」

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