第8話 先輩とラーメン

 チーズケーキをつぐみさんに受け取ってもらえなかった次の日、勝俣さんからラインが来た。チーズケーキ俺にも作って! とのこと


 そして勝俣さんとのバイトの木曜日。


「チーズケーキ作ってきました、どうぞ」

「ありがとう! 清水、いや海野があんまりおいしいっていうもんだから俺も食いたくなった」


 そう言ってチーズケーキの包みを空け食べ始める勝俣さん。仕事中なのに……


「めっちゃうまい! 清水菓子作りの天才じゃね」

「ありがとうございます、うれしいです」

「つぐちゃんにもあげれば?」

「……つぐみさんチーズケーキ嫌いって返されました」

「……あっそっか……そんなに落ち込むなよ」


 慰めてくれる勝俣さん。茶髪パーマだが優しい。


「チーズケーキのお礼に仕事終わりにラーメン奢ってやるよ」

「えっまじっすか」

「まじまじ」


 そしてバイト終了後に勝俣さんの車でラーメン屋へ行くことに


「いらっしゃいませ!!」


 ラーメン屋なんて久しぶりの清水、テンションが上がる。なんでラーメン屋の店員は頭にタオル巻いてるんだろうと毎回疑問に思う。


「俺は醤油とんこつ頼むけど、清水は何頼む? お勧めは醤油とんこつか塩とんこつだよ」

「じゃあ塩とんこつで」

「了解」


 約三分後ラーメンが届く。ラーメンをすする二人。


「塩とんこつめっちゃうまいです!」

「そうか! よかった!」

「で最近つぐちゃんとはどうなの?」

「どうって特に何も……」

「は! なんもしてないの! デートくらいしろよ! 糞清水!」


 勝俣さんから糞呼ばわりされてしまう。


「デートではないですけどこの前二人でカラオケ行きましたよ」

「……それデートじゃん」

「え?」


 唖然とする清水。この前のカラオケのことをデートとは気付いていない様子。


「デートって言うのは付き合ってる男女が遊びに行くことを言うんじゃなんですか?」


 呆れる勝俣さん。その表情は硬い。


「あのな清水……付き合っていようがなかろうが男女が二人っきりで遊びに行くことは立派なデートなんだ……覚えておけ、このハゲ清水!」

「……覚えておきます」


 今度はハゲ呼ばわりだ。怒られながらもラーメンをすする清水、ちなみに清水ハゲてはいない。


「まあまじめなお前のことだ、キスの一つや二つもできていないんだろうな」

「そうですね……まあ押し倒しておっぱい揉みましたけど」

「ぶ!」


 ラーメンを噴出す勝俣さん、めちゃくちゃ驚いてる。


「お前意外に大胆だな、いくらつぐちゃんがおとなしいからって密室をいいことにS●Xするなんて……流石にアウトだろ……糞ハゲ清水」


 今度はミックスで糞ハゲ清水だ。


「S●Xはしてないですよ、二人で踊ってたら転んじゃって押し倒しちゃったんですよ」

「なーんだ事故でおっぱいも偶然触っちゃたわけか、このラッキースケベ♡」

「そうなんですよ、偶然触っちゃって、でもその後あんまり柔らかくて我慢できなくて三回揉みました」

「おっぱい揉んだのは故意なのかよ、エロ清水」


 勝俣さんに軽くぶたれる。ちょっと痛い。今度はエロ呼ばわり


「故意にたくさん揉むようじゃ、お前完全に嫌われたんじゃないかな……」

「謝ったら許してくれましたよ、しかもまた触らせてくれるって言ってくれましたけど」

「つぐちゃんってそんなビッチだっけ?」






「で?いつ告白するの?」

「未定です……」

「しろよ! 先輩命令だ!」

「無理ですって……つぐみさんに会えるのバイト中だけですし、バイト中に告白とかできませんよ」

「誰がバイト中に告白しろって言ったんだ」

「え?」

「またデートに誘うんだよ、そしていいムードの時に告白するんだよ」

「でもどこに行けば?」

「そうだな~そういえば!」


 勝俣さんがバックを漁る。


「はいこれ、今度の花火大会のチケット二人分」


 渡されたのは、毎年八月七日、通称花火の日に行われる大規模花火大会の有料観覧席のチケットだ。


「え、いただいていいんですか?」

「いいよ、俺も彼女と行く予定だったんだけど彼女が学校の予定で行けなくなったって言うもんだから」

「じゃあいただきます! 妹ちょう行きたがってたんですよ! 妹と一緒に行ってきます!」


 またぶたれる清水。今度は本気のようだ、かなり痛い。


「お前、話聞いてた? 誰が妹と行けって言ったんだよ! 話の流れからつぐちゃんだろ!」

「すみません……」

「ちゃんと誘えよ、誘わなかったら殺すからな」


 勝俣さんの殺気は本物のようだ。誘わなかったら本当に殺されそうだ。


 なんやかんやで二人はラーメン屋を後にする。


「今日はありがとうございました、ご馳走様です」

「おう! ちゃんとつぐちゃん誘うんだよ、じゃあな」


「花火大会か……つぐみさん一緒に行ってくれるかな?」


 果たしてつぐみさんはOKしてくれるのか心配な清水であった。

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