第5話 二人でカラオケ

 土曜日の九時半、清水はカラオケパークという店の前でつぐみさんが来るのを待っていた。そう今日は約束した。カラオケ当日なのだ。


「三十分も早く着いちゃった……」


 つぐみさんと落ち合う時間は十時にカラオケパーク前でとのことだったのだが、遅刻するのがいやな清水は三十分も早く着いていた。それもそのはずつぐみさんとの二人きりのカラオケ、万全を期すために二十一時に就寝し、五時に起床し準備をしていたのだから。


 待ってる間以前の飲み会で海野さんから送られたつぐみさんの写真を見ていた。その時


「何見てるんですか?」


 後ろから聞き覚えがある可愛い声が、清水はあわてて携帯をホーム画面に戻す。


「は、早いですね、つぐみさん! びっくりした、何見てたかって天気予報ですよ ハハハ」


 つぐみさんに写真を見られたのではないかとハラハラしながら必死にごまかす。まさかつぐみさんがこんなに早く来るとは思わなかったので焦る。


「清水さんだって早いじゃないですか! 今日の天気は一日快晴みたいですね」


 つぐみさんの返答でどうやら写真は見られてないようだと安心する。


 つぐみさんを見ると、服装が白のTシャツに太ももまるだしのショートパンツだった。しかもTシャツから黒いブラが透けているのが見え、清水は目のやり場に困り下を向く。


「どうかしましたか? 下向いて? 大丈夫ですか?」


 前かがみで接近するつぐみさん、シャツの間から胸の谷間が見える。清水の顔トマトのように真っ赤だ。欲望が暴走しそうだ。


「大丈夫……です……中はいりましょう」


 なんてエロい格好なんだと思いながらもドキドキしながらもなんとか欲望を抑え、二人で店内へ入る。


 店内でコースと飲み物を決める。今回は二時間コースで清水はウーロン茶、つぐみさんはカルピスを頼んだ。


 そしてカラオケルームに入る。男女で二人っきりの密室ってちょっとやばくないかと思いも、これから二時間つぐみさんとカラオケだと思うとわくわくが止まらなかった。


 さっそく機械に曲を入れようとする二人、清水は慎重に一曲目を入れる。今回は二人でカラオケ、一人ではないためつぐみさんが聞いてもわかる曲、もしくは面白い曲を入れるのがベストと考える。ここは面白い曲で攻めるべしと、曲を決定する。


 画面に曲名が表示される。イカスミダタコスミダ 影山ヒロノブ。


「いかすみだたこすみだ? なんですかこの曲!」


 つぐみさんが驚きながらも不思議そうな顔をする。


 清水は心をこめて歌いだす。


「いかすみ、たーこすみーいかすみ、たこすみ、いーかすみ、たーこすみ♪」


 ちなみにこの曲は、イカとタコがどっちがうまいかけんかするお話だ。歌ってる歌手はドラゴンボールのOPのCHA-LA HEAD-CHA-LAで有名の影山ヒロノブだ。あまり知られてない隠れた名曲だ。


「いかは歌うし、たーこおどーる♪」


 清水は歌いながらつぐみさんを横目で見る。つぐみさんは手で口を押さえながら大笑いしていた。


 曲が終了すると、つぐみさんが笑いながら


「なんですか! このへんな歌! おかしくて面白くて、こんな曲歌える清水さん変です!」


 と興奮が抑えられないままつぐみさんが言った。


「つぐみさんも歌ってみます?」

「遠慮しておきます」


 速攻で拒否られたが、最初の一曲としては良い出だしだと手ごたえを清水は感じた。


 そして次はつぐみさんの番、どんな曲歌うのかな~と楽しみだ。


 画面に曲名が表示される。にんじゃりばんばん きゃりーぱみゅぱみゅ。


 てっきりヴィジュアル系を歌うと思っていたので、きゃりーぱみゅぱみゅとは驚きだ。


「鮮やかに、恋してにんじゃりぱんぱん、なんだかにんじゃりぱんぱん♪」


 めっちゃかわいいいい、きゃりーぱみゅぱみゅファンには失礼かもしれないが、本家より可愛い声だ。歌いながら今にもつぐみさんは跳ねそう。


 歌い終わると清水は拍手しながら言う。


「めっちゃ可愛かったですよ! 本物より上手ですね!」


 つぐみさんが照れながらも言う。


「えへへ、ちょっと恥ずかしいです」


 恥ずかしがるつぐみさんも可愛いな~と相変わらずニヤニヤする清水。


 その後も二人は色々な曲を歌いあい、互いに褒めあい順風満帆に時間が過ぎる。


 楽しい、時間が過ぎるのがあっという間だ、こんな時間がいつまでも続けばいいのにと思っていると、フロントから電話が鳴る。


「お時間十分前です。よろしくお願いします。」


 もうそんな時間だ。時間的に最後の一曲になる。


 そんな中まだゴールデンボンバーの女々しくて歌ってないことに気付いた。その時清水に名案が浮かぶ。


「つぐみさん! 最後に一緒に女々しくて歌いませんか?」


 名案とはつぐみさんとデュエットすることだった。


「いいですよ! 歌いましょう!」


 ノリノリで答えるつぐみさん。ついにデュエットが始まる。


「女々しくて女々しくて辛いよー♪」


 サビになると二人で跳ねながら窓拭きダンスを楽しそうに踊る。


 そして窓拭きダンスの最後のサビ。


「愛情っていうかたーだ君がほしい僕の心イーヌのよーう、騙されたって♪」

「うわ!」

「きゃ!」


 ダンスに夢中で清水は転んでしまった。つぐみさんを巻き込んで……

 

 転んだ先はソファーがあったのでつぐみさんは無事だったが、気付いたときにはつぐみさんを押し倒している体制になっていた。













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