第4話 ヴィジュアル系になりたい
YOマートメンバーでの飲み会をこなし、つぐみさんとラインも交換し少し仲がよくなってきたと感じた日曜日。清水はYOマートで商品の品出しをしていた。毎回レジの清水にとって体を動かす品出しは楽しく、時間を忘れさせた。
そんな中後ろから肩を叩かれる。
「こんにちは!」
つぐみさんが笑顔でイヤホンを手にしながら立っていてた。喜びながら返事をする。
「こんにちは!」
この毎回なにげない挨拶を清水はすごい好きだ。なにげない挨拶だが清水にとって本当に大切なものであり対人関係を円満にする。
イヤホンを手に取っていたので、なんの音楽を聴いてるのか気になった。
「なんの音楽聴いているんですか?」
「ヴィジュアル系です」
「ミジュアル系?」
「ヴィジュアル系です、V系とも呼ばれます」
清水はヴィジュアル系をまったく知らない。
「全然知らないんですけど……」
「知らないんですか? 有名なものとしてゴールデンボンバーとか」
「ごーるでん……ぼんばー……」
「家で調べてきますね」
ゴールデンボンバーも知らないため、ヴィジュアル系とゴールデンボンバーと言う単語をメモ帳につぐみさんに書いてもらった。小さくてかわいらしい字だ。
バイトから帰宅した清水はさっそく調べることに、まずはYouTubeでゴールデンボンバーと入力した。検索トップに女々しくてと言う曲のPVだったので、それをクリック。
「女々しくて、女々しくて、つらいよーーーー」
独特なフレーズとともに、派手なメイク、衣装の男性が踊り狂う。
「めっちゃ派手!」
見たことのないジャンルのアーティストになんだか心が揺さぶられた。そしてサビに入り入ると、男たちはまるで窓拭きをするようなダンスを繰り広げるのだった。その変なダンスに笑ってしまった。
そんな彼らに驚愕しながら聴いてると、最後のサビに入り、盛り上がる。清水も曲と同じ興奮してるのが分かる。あっと言うまに曲が終了。あまりに衝撃的だったのでリピート再生。面白いのかかっこいいのか、どっちだか分からないゴールデンボンバーに気がつけば魅了されていた。
何十回もリピートしてゴールデンボンバーを楽しんだあと、結局ヴィジュアル系とはなんなんだと思いインターネットで調べることに、
ヴィジュアル系とは日本のロックバンド及びミュージシャンの様式の一つ。 特定の音楽ジャンルではなく、化粧やファッション等の視覚表現により世界観や様式美を構築するものである。
つまり、派手な化粧、ファッションで聴くだけではなく見ることを重視していることだなと要約した。
「これがヴィジュアル系なるほど……V系か」
清水はヴィジュアル系に憧れを抱いた。かっこいしなによりつぐみさんが好きなジャンル、こんな風になればつぐみさんに好きになってもらえるのかと思った。
が、さすがに日常生活であんなハデなメイクはできない。のでゴールデンボンバーの曲だけでも歌えるようにしようと一人カラオケで練習した。
次の木曜日、つぐみさんと二人きりのアルバイト。いつも通りレジが暇な時会話を始めた。
「そういえばヴィジュアル系見ましたよ、ゴールデンボンバー、なんか面白かっこいいですね」
さっそくヴィジュアル系について報告。
「ヴィジュアル系はかっこいいんですよ!」
つぐみさんが満面の笑みで語る。あんまり笑みが可愛いんで写真撮りたいと思った。
「僕もかっこいいと思いますね、あんまりはまっちゃたんで一人カラオケでずっと歌ちゃいました」
清水は女々しくての他にもゴールデンボンバーの曲にはまり、歌えるように練習していた。
「カラオケ私も行きたいです……」
つぐみさんが寂しそうに小さく言う。
清水は困った。これはつぐみさんがカラオケに誘ってほしいと遠回しに言ってるのでないか、誘うべきか、否か、非常に迷った。でも、一緒にカラオケとか行きたすぎる! 断られるの覚悟で恥ずかしながらも
「じゃあ二人でカラオケ行きませんか?」
時が止まったかのような数秒後
「行きましょう! 二人で!」
ニッコリとつぐみさんが微笑んだ。
なんと! なんと! 二人でカラオケに行くことに決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます