第3話 初めての給料で飲み会
「清水さん……清水さん」
ん? ここはどこだ? 薄暗い部屋誰かが清水を呼んでいる。
「清水さん……つぐみです」
部屋の中でつぐみさんが全裸で騎乗位で攻めていた。
「あ……あ……あ……」
つぐみさんがかわいい吐息をあげる。清水も思わず腰を振る。
「気持ちい……」
「気持ちいですか??」
つぐみさんがにっこり笑いながら質問する。
思わず、つぐみさんの大きな胸をつかんでいた。絶頂に達成しようとした時、目覚まし時計が妨害するように鳴った。
「夢だったか……しかも淫夢」
「朝からこんな淫夢を見るなんて……しかもつぐみさんのあんな姿……」
すごくラッキーな気がしたがなんとなくつぐみさんに申し訳ないと思った。
昨日のつぐみさんの笑顔を見てからずっと、つぐみさんのことを考えていた。学校にいるときもどこか清水は上の空だ。
今日は金曜日で清水のバイトのシフトの日である。学校を終えると家で小休憩したのちいつも通りYOマートに向かう。今日のバイトは誰だろうかな? つぐみさんがいいなと思いつつレジ点検をこなしていく。その時
「こんちゃーす」
入り口から茶髪パーマの高身長イケメンの勝俣さんが顔を出した。今日のバイトは勝俣さんとみたいだ。
これで自分のシフトに誰が来るのか判明した。火曜日は黒髪ポニーテールの海野さん、木曜日は金髪ツインテールのつぐみさん、金曜日は茶髪パーマの勝俣さん、日曜日昼間はおばさんの吉田さんとおばさんの相月さん、夜はつぐみさんと勝俣さんという具合だ。つまりつぐみさんに会える曜日は木曜日と日曜日だ。木曜日は二人きりになれる。日曜日はレジ交代の時にちょっと会える。なんだか木曜と日曜が楽しみになった。
そんなこと考えていながらも勝俣さんとのバイト開始。清水は仕事には慣れたようでスムーズにレジをこなしていった。勝俣さんも見た目ちょっとチャラいがレジ打ちでは親切丁寧でときどきお客さんとも談笑していた。十九時になりお客さんが空いた頃、勝俣さんから話しかけられる
「仕事は慣れた?」
「はい! 慣れました」
「海野やつぐちゃんには会った? どう?」
「会いました! 二人とも優しいです」
「そっかそれはよかった」
勝俣さんがつぐみさんのことをつぐちゃんと呼んでることが気になり思い切って聞いてみた。
「つぐみさんのことどうしてつぐちゃんって呼ぶんですか? 付き合ったりしてるんですか?」
勝俣さんは微笑しながら答えた。
「つぐちゃんは俺の友達の妹、昔からつぐちゃんって呼んでるかな、全然付き合ってないよ? もしかして清水くんつぐちゃんに興味あるの?」
清水は図星だったが少し慌てながらも本音を言った。
「可愛いですよね。つぐみさん」
「なに! 清水君つぐちゃんのこと好きなの? 今、つぐちゃん彼氏いないからチャンスだよ」
清水は恥ずかしながらも
「好き……かも……しれません」
と小さく言った。
「そっか、つぐちゃんのことをね~じゃあ今度YOマートのみんなで飲み会行こうよ、つぐちゃんも誘うからさ、行こうぜ、未成年だから酒飲めねえけど」
とても断れるような雰囲気でもなく、清水も行きたいと思ったため
「給料もらったらいかせてもらいます」
と答えた。さっそく給料の使い道が増えた。つぐみさんと飲み会なんだか楽しそうで今からでもなんだかワクワクし始めていた。
そんな話をしてるうちに閉店だ。いつも通り閉店業務をこなし店を後にする。
「お疲れ様、じゃあ飲み会予定組むからライン教えて」
「ラインですね、わかりました」
と二人でラインの交換をした。飲み会が楽しみだ。
しばらくバイトを続けていたら、ついに給料日やって来た。一ヶ月頑張った証だ。給与明細を見ると約三万円ほどの給与。
「三万!」
驚いて思わず口にしていた。お年玉も一万ちょっとしか貰えない彼にとって三万というのは大金だ。なにに使おうかな~とか気持ち悪い笑みを浮かびながら考えていると、携帯からラインの通知音が鳴る。勝俣さんからだ。飲み会今週の土曜日の十二時からぺんたつでやるから海野とつぐちゃんつれてくから来てね。とのこと。了解ですと即座に返事をした。ぺんたつというのは清水の近所の居酒屋だ。初給料の使い道はYOマート皆との飲み会に決定した。
そして、飲み会当日、清水はお気に入りのオレンジのポロシャツ、ベージュのチノパンをはき約束の時間にぺんたつに向かった。駐輪場に自転車を止めてあたりを見渡すが誰もいない、そんなオロオロしてる時、勝俣さんからラインの通知。もう入ってるから早く来てね。とのこと。どうやら先に店内に入ってるようだ。
店内に入り勝俣さんたちを探し見つける。
「お待たせしました皆さん」
「おう待ってたよ、席こっちね」
先に勝俣さんと海野さんとつぐみさんが席に座っていた。示された席はつぐみさんの隣だ。勝俣さんが気を使ってくれたのかもしれない。
「失礼します……」
緊張しながらつぐみさんの隣に座る。距離が近い。肩と肩がぶつかりそうな距離だ。
「めっちゃオレンジですね」
つぐみさんが手で口を押さえて清水の服をみながら苦笑した。
「え! オレンジ大好きなんですけど変ですか?」
つぐみさんの苦笑した顔も可愛いなと思いながら聞く。
「似合ってますよ」
まだ苦笑していた。笑いのつぼに入ったようだ。オレンジってそんなに変かな? と思う清水。
一方つぐみさんの服装は、ジーパンに白の可愛いシャツ。相変わらずの金髪ツインテールでギャルっぽく可愛い。ちょー私服似合ってます! と言いたいところだが恥ずかしくて言えなかった。
「じゃあ飲み会開始するよ~二千五百円のコースでジュースとか他にも単品で頼みたいのあったら頼んでね」
コース料理など頼んだことない清水は少しずつと運ばれる料理に目を奪われていた。前菜、サラダ、刺身盛合せ、焼き鳥盛合せ、オードブル、ピザ、お食事、デザートとメニューに書いてあった。単品メニューで勝俣さんと清水はカツ丼を注文した。
「ぺんたつのカツ丼はうまいんだよなー」
と勝俣さんが言っていたためである。
おのおの料理を摘みながらしばし談笑。アルバイトの話、学校の話、など色々話した。そんな中好きな人のタイプの質問が個々に始まった。
「つぐちゃんはどんな人がタイプなの?」
勝俣さんが堂々と聞く。
「私は面白い人が好きです」
それを聞いて清水は面白い人にならなければと決意するのである。
「清水君はどんな子が好きなの?」
海野さんが堂々と聞く。つぐみさんが好きなんて恥ずかしくて言えないし、それとなく、
「小柄で可愛い子です」
とそっと答えた。ほーんとした顔で皆清水を見る。今度は清水が聞く
「勝俣さんと海野さんはどんな人がタイプなんですか?」
「俺は大人っぽい女性かな」
「私は長身でイケメンで紳士な人がいいな」
二人はそれぞれの好みを隠さず話した。
そんな中、黒髪ポニーテールの海野さんが
「清水くん一発ギャグなんかやって」
と無茶振りを振ってきた。乗り気ではないが周りの空気がもう期待でいっぱいだ。つぐみさんも見ている。一発カマスしかない! 机に並んでいるオードブルから箸でアジフライを取る。
「アジフライ、空を飛ぶからアジフライ……フライーング! シューー! 」
と箸でアジフライを飛行機にみたて操作した一発ギャグを披露。空気が凍った感じがした。が、つぐみさんは口に手を押さえて笑いを堪えていた。
「つまんな……」
勝俣さんと海野さんが口をそろえて言った。まあつぐみさんが笑っただけで清水は幸せだ。
なんやかんや二時間ぐらい食べておしゃべりして今回の飲み会は終了。最後に写真を撮ることに、
「はい撮りますよ~」
店員さんが言うと同時に勝俣さんが
「ほら清水くんもっとつぐちゃんに寄って! 早く!」
え? まじでと思いながらもドキドキしながらつぐみさんに接近する。肩があたるのがわかった。やばいドキドキしてるのばれないだろうか、顔赤くなってないだろうか? いい匂いがする、完全にパニック状態。
「はいチーズ」
カシャッ! なんとか撮影終了。
「あとでみんなにラインであたしが送るからね、清水くんライン教えて」
と海野さんが言う。海野さんとライン交換した。清水はつぐみさんのラインも知りたかったので、恥ずかしい気持ちを抑えて
「つぐみさんもライン教えてもらってもいいですか? ほらバイトも変わってほしい時の連絡とかもしやすいし」
もっともらしい理由をつけてライン交換をお願いした。
「いいですよ」
即答するつぐみさん。なんとかつぐみさんの連絡先ゲット!
そして解散となった。家に帰り早速つぐみさんにライン。今日は楽しかったです。ありがとうございました。と送った。すぐに既読マークつきつぐみさんから返事が、私も楽しかったです。アジフライ面白かったですよ。おやすみなさい との返事だ。ギャグを褒めてくれうれしかったと同時にまたいっそつぐみさんのことを好きになっていることを自覚した。
そんなこと考えてるうちに海野さんからライン通知。今日撮った写真送るね。たくさんあるから大事にしてね。 写真をみると最後の集合写真だけでなく知らぬ間に撮られていた写真がたくさん。その中にはつぐみさんがニコニコ笑ってる写真が発見。これは宝物だと海野さんに感謝し、今日は寝床に着いた。いい夢見れますように……
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