第38話  好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好好②





 私は太一が好きです。

 理由はたくさんあります。

 ですが、よくよく考えると、全てが好きです。

 一緒にいる時も、

 笑い合う時も、

 なんだって愛しますし、傍にいたいと思い描いています。

 時に、今は夢の中なのでしょうか?

 ふわふわ。

 で、心地いような、笑顔のような。

 朝なのか。

 青なのか。

 はたまた、好きなのか。

 きっと夢なのでしょう。

 夢なのです。

 ああ。

 好きだなぁって思います。

 好きだなって感じて、直感で聞くと、端からアリクイがうねうねと。

 おおよそになって。

 ぞわぞわと。

 そうなると、天にも昇るような気持ちになって。

 ちまり、

 あはははは。

 夏祭りは嫌。

 嫌い。

 なんで?

 わかんないけど、足が棒のようになって三半規管が前後の揺れれ。

 もねがドキドキと指折り数えて。

 はじけて。飛ぶ。











 夢だから、夢だったらいいのに。そして夢なので、もし夢だったら。だったえあえあおあお。


 夢であるとしたら。

 仮定して、ぼんやりと水面に漂う太陽のように。

 ぶわりと。

 オレンジの武道は当然あいうえおだけど。匙加減で砂漠で銀を拾うヒントをぞうあと。

 したらば。ねね。

 そしたら、私は思い出す。

 指切りげんまん。

 遊んだ。

 指切った。

 約束した。

 覚えてる。

 それだけは。

 多分。

 きっと。

 うん?

 きっと。

 思い出せない。

 内容?

 指を切った。

 なんで?

 なんで?

 なんで?




















 あてて?

 そう?

 恐ろしい。

 トラック。

 ぞくろ。

 どどう。

 べとだと。ぞぞめいろ。多分ね。

 きっと、指を切った。

 記憶。

 あはっと笑顔。


 






 


















 思い出す。

 確か、

 約束。

 指切りげんまん。

 付き合ってくれるっていった。

 太一が。

 太一が好きになるって言ってくれた。

 他のほとが好きなのに、好きなんて言っでぐでででた。

 素敵。

 嬉しい。

 約束。




 思い出す。と。





 不思議、と、光が天をかざして。

 宇宙に輝く。



 星のような妖精。

 さらり。

 





 




 ああ――そうだ。

 思い出したよ。


 太一と確か約束したんだっけ?

『お願いだから、自分を犠牲にしてまで頑張らないでって』

 そして、嘘をついたら――彼女と別れて私と付き合ってくれるって。

 ふふっ。


 なーんだ。

 



 簡単じゃん。

 こんなことをずっと悩んでいたのか。

 もっと前から、




 こうすれば、よかったんだぁ。








 * * * * *








「………………………………」

 泣きじゃくっていた花音が突然ピタリと動きを止めて、星々が輝く天を見上げた。


 そしてぐらりと上体を戻すと、


「――――あはぁ」



 まるで何かを閃いたかのような笑みを浮かべた。



「……お、おい。花音?」


 僕が尋ねるが、花音は笑みを浮かべながら無視。そして首が折れてしまうか不安になるほど首を傾げ、クルリと円を描くように回る。一回転二回転三回転。目が回ったのか、次第に回転速度は落ちていき――フラフラの酔っ払いが出来上がった。



「ねぇ。太一」


 平衡感覚を失った花音は橋の手すりに寄りかかり、目を回しながら――しかししっかりと太一の目を捉えて言う。


「頑張って助けてね」

「……は?」


 次の瞬間、花音は驚くべき行動に出た。


 恐ろしいことに――橋の手すりのをよじ登り始めたのだ。「よっと」呑気そうな掛け声とは裏腹に状況は鬼気迫るものがあった。



 あと一歩でも前に前進すると、彼女の全身は川に真っ逆さまであろう。昼ならまだしも、夜の川は夜空と同じく漆黒に染まっており、助けるのは至難の技である事が容易に想像できた。そもそも、この高さから落ちたらそれだけで死んでしまう可能性が――。


 ゆらりと、花音が揺れた。僕は勢いよく地面を蹴り、大股で出来る限りの全速力で花音の元に向かうが、既に花音の上体は川へと傾いていた。



「花音――――――――ッッッッ!!!!!」



 僕は手を伸ばす。まだ間に合う。まだ彼女は落ちていない。まだ大丈夫だ。

 自分にそう言い聞かせて、花音の手を掴もうとするが――あと十センチほどの距離がどうしても届かない。いや、花音がこの手を掴んでくれたなら――。




「――太一。好きだから――私と付き合って」







 そのためだったら、なんでもするから。





 ――パシリ。弾かれたような音が鳴った。

 それは僕が花音の手を掴んだ音ではなく――むしろその真逆に位置する、絶望の音。






 僕の限界まで伸ばした手は。

 誰でもなく、花音自らが弾いたのだ。




 何故?

 混乱する頭で、花音を見ると――こんな状況なのに、彼女は笑っていた。

 まるで――恋する乙女のような屈託のない笑顔を。



 そして、



 あっと言う間に花音は重力に従い、橋から落ちた。



 そして数秒の間の後――まるで花が咲いたかのように水面に模様を描き、

 ドボンと。音を鳴らし。










 花音は姿を消した。







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