第4話クラスを半壊滅させる。

目が覚める。

夢は見ていなかった。

昨日の疲れのお陰で熟睡できたようで体が軽い。

普段から目覚めの良い方ではないが、今日は珍しく瞼が素直に動いた。

「んん〜〜。もう朝?」

見慣れた天井から、視点をこれまた見慣れた本棚やクローゼットに移す。

ボサボサと寝癖で散らかった髪を撫でてベットから軽快に飛び降りて洗面台で顔を洗おうと水を出す。

その水を手で受けようとした瞬間にパキパキと音を立て、水が氷と化した。

「あぁー。またやっちゃったよ・・・またミザリーに怒られちゃうぅ」

と、少し涙目になりながら少女は悲しむ。いくら目が覚めていても寝起きの朝だ。脳が完全に覚醒しておらずスキルが暴発した。

自分が制御出来ていないのもあるが。

氷の様子をマジマジと見たのち、はぁっと深いため息をつき少女は落胆した表情をする。

「はぁぁ〜。これ、結構水道の奥まで凍ってるな。時間かかりそうだなぁ」

と、コンコンと先ほどまで流れ出ていた水だったものを指で叩く。

取り敢えず、と簡単に髪を解かして後頭部らへんで括りポニーテールにする。

鏡で括った部分をチェックし、

「よし、オッケー」

と、少し唇の端を吊り上げて言う。

「おーい。マーリー!」

コンコンと、少女が制服に着替えたところで軽快な音が部屋に響く。

「えへへ〜おまたせ〜」

と、勢い良くドアノブを回し軽快なステップで廊下に出る。

そこには和かな顔で少女が待っていた。

「じゃあ行こっかー」

二人は顔を見合わせて挨拶を交わすと学校への道を歩き始めた。



「失礼します。アーティスさんはいらっしゃいますか?」

と、上品な言葉使いと手入れの生き通った髪を靡かせ教室へと足を踏み入れる彼女こそ、オリヴィエ・アーツ・クルードその人であった。

クラスが一気に騒然とする。

気だるそうに寝ていた生徒や、友達とふざけあっていた生徒が一目散にオリヴィエの元へ群がっていく。

「オ、オリヴィエ先輩どうしましたかっ?!」

「せ、先輩!今日もお美しいですっ!」

と、口々に言う生徒達を鬱陶しそうにしながらもオリヴィエは笑顔で受け答えした。

そんな群がりをかけ割ってオリヴィエへ向かってくる黒髪が一人。

「どうも、僕がアーティス。アーティス・ハーティです」

と、オリヴィエの前に現れた黒髪紅眼の少女が軽く会釈する。

「あぁ、お初にお目にかかります。中等部3年、オリヴィエ・アーツ・クルードと申します」

胸に軽く手を添えて頭を下げるオリヴィエに、アーティスは少し緊張した表情で畏る。

「僕に何かようでしょうか?」

と、固い表情でアーティスが問う。

「う、うん。そう硬くならなで欲しいです。それと、ここでは少し話し難いので場所を変えませんか?」

と、オリヴィエを囲う生徒の群れを見て苦笑する。

先程までとは比にならない量へと変貌を遂げている群がりにアーティスがオリヴィエの人気ぶりを感じ冷や汗を書く。

「そう、ですね・・・ではまずこの群れをどうにかしましょうか」

アーティスはそういいながら小さく「スキル『発動』」と呟く。

刹那、アーティスの体を光の粒子が纏い、教室に衝撃が伝う。

ジリジリと一帯の空気が振動し、オリヴィエとアーティスを取り囲んでいた生徒がバタバタと倒れ始めた。

ちょうどオリヴィエとアーティス二人が通りやすい道ができた時オリヴィエが驚愕の表情でアーティスを見つめた。

「君は・・・なかなか好戦的なんですね?」

アーティスも流石にやり過ぎたと思いその言葉に苦笑いを浮かべる事しかできなかった。

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