アップル&ストロベリーパフェ
なんだか学校での毎日にも慣れ始めた今日この頃。
噂話もなくなり、特にいじめられることもなく空気のように過ごす日々。まぁ相変わらず友達なんかいるはずもなく。
別に友達がいないからつまらないなんて事はない。最近はファミレスだけではなくマンガを買いにマンガ屋にも行ったりしている。
今だって学校が終わり、1冊のマンガを購入してからファミレスへ向かっている途中なのだ。
『異世界ホスピタルで回復を!!』
最近こういう異世界ファンタジーのマンガにハマっている。
今まであまり読んだことがない部類だったが、クラスの男子達が話しているのが耳に入ってきて読み始めると意外とハマってしまった。
母から貰えるお小遣いの使い道が大体このマンガとファミレスに流れていく。
今日はこのマンガを読むと決めてファミレスの扉を開く。
…テレレンテレレーン
「いらっしゃいませー。あ、お好きな席へどうぞー!」
数日間通い続けると、どうやら席が自由に座れるらしい。俺は密かに自分の中でお気に入りの席になっている窓側の席に座った。
ここは店の端っこの方にあるため、人の目につきにくい。目立つことが好きではない自分にはピッタリの場所だ。
今日は最近クラスの女子達が噂しているパフェを食べたいと思っている。
―ピーンポーン
「ご注文お決まりでしょうかー?」
「このアップル&ストロベリーパフェを1つ…」
「はい、かしこまりました!少々お待ちくださーい!」
相変わらず元気な店員さんだなー。
見た目は高校2年…3年くらいかな。
黒髪でポニーテールの清楚系。結構可愛い感じの人だ。
「お待たせしましたー!アップル&ストロベリーパフェでーす!」
生クリームとバニラアイス。その上にイチゴの半身が円状に並べられ、さらにその上にリンゴの半身が同じように並べられている。そしてイチゴ、リンゴのソースが甘酸っぱい香りを漂わせている。
いざ食べようとした時…
「あのー、加藤さん…ですよね?」
1人の女の子に声をかけられた。うちの高校の制服を着ている。うちの制服には学年を示す色のバッチが胸元についており、それが自分と彼女の学年が同じだという事を語っている。しかし、クラスに話す人が1人もいないような俺が他クラスの人と、しかも女子と話す事などあるはずがない。
「あ、あの、私、加藤くんと同じ高校に通っていて、3組の
「は、はい、こんにちわ」
あ、言い忘れてたけど俺は6組だ。てことは佐々木さんはかなり、離れてるクラスの人だ。というか―
「あの、なんで俺のこと知ってるんですか?」
「あ、えっと、私ここの近くに住んでいて、加藤くんが毎日のようにこのファミレスに入っていくからすごく気になってて…」
「それで僕のことこっそり調べてたんですか?」
「は、はい…すみません」
「いや、別にいいんですけど」
別にいいというかなんというか…ちょっとごめんなさい、気持ち悪いと思ってしまいました。
だって普通、そんな事で調べるか!?
ストーカーの域に入るぞそれ!
「そのパフェ、いつも食べてるんですか?」
「い、いえ、今日はこれ食べたくて、いつもは普通の定食とか食べてます。」
なんなんだこの人は…
ていうかこの流れじゃなかなかパフェが食べれないじゃないか。
佐々木さんは少し茶色っぽい髪の色で、店員さんと似た髪型をしている。だが、清楚系というより元気な女の子って感じがする。スポーツ系とは違うが、よく喋る人って感じだ。
「あ、あの、邪魔ですよね!すみません!また今度会いましょう!」
そう言って彼女は去っていった。
まぁ、おかげで本を読みながらパフェ食べれるからいいけど…なんだったんだ。
目の前のパフェから鼻をつく香りが再度漂ってくる。
佐々木さんのおかげでお預けだった俺はすぐさまスプーンを手に取り、ゆっくりイチゴソースのかかった生クリームをすくい上げる。
口の中に運ばれた生クリームは舌の上でふわりと溶ける。濃厚なクリーム、甘酸っぱいイチゴの香り。これは確かに女子に人気が出そうだ。
次にリンゴソースがかかったバニラアイスを口に運ぶ。ひんやりと溶けるバニラアイス。イチゴとは違った酸味が舌を走り抜ける。
マンガを読みながら食べていると、気がついた時には時間もパフェもマンガの残りページも減っていた。
それにしてもあの佐々木さんが最後に残したまた今度会いましょうはどういう意味だったのだろうか。また俺に会う気があるって事…なのだろうか。
支払いを済ませた俺はその事がモヤモヤと頭に残ったまま帰宅した。
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