肆
桐が手当をしていると真神がぼそぼそと話し始めた。
「かなり昔……そうだな、江戸時代って言うのか?ここら辺の村は災害に襲われて大変な時があったんだ。
俺は土地神だから色々言われてな。
『祟り神』だとか『俺たちを見放した』
ってな。
天候なんて俺にもどうにも出来ないのに。
そんな時にあの妖狐"
アイツ、心が弱りきった村人達に嘘を吹聴して回ったんだ。
『あの神はあんた達を愛していない。
お前らは自然を汚す。動物より害悪だ。
だから天罰を下す。餓死するがいい。』
そんな内容だった気がする。
嘘が出回った途端に俺に対する態度が急変したんだ。
その頃、俺には好きだった人間の女がいてな。とても明るくて、橙色の花が似合う奴だった」
そう言い真神は懐かしそうに微笑む。
だがその微笑みもすぐに消え去り、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「同じ人間なのに俺に魅入られたからって
その女──詩子を虐め始めたんだ。
酷いものだった、石を投げつけられたり
悪口を言われるのなんてしょっちゅうだった
でも、俺には何も出来なかった。
近づいたら酷くなるかもしれない
そう思ったから。
『神と内通しているから。』『こいつがいるから飢饉が終わらないんだ。』『こいつを生贄にすれば。』って、なんの罪もないただ1人の女をな。
それから俺は怒りに任せて不知火を攻撃し、この地に一歩も入れないよう封印した。それが今の
その事が祟ってか知らないが、俺も封印された。だけど、所詮は人間だ。この札の効力も
もうすぐ切れる。」
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