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銀 鈴は呼びかけた。

だが返ってきた言葉は、耳を疑うようなものだった。

「私に妹は居ない。誰かと勘違いしているんじゃないのか?確かに私もお前と同じ付喪神と呼ばれる者だろう。だが私のこの体躯からだはもはや神器と呼べる程には清くないぞ。そうだな、私は穢れているのだろう。穢れた願いを叶えすぎた。人間とは醜いものだ。私を所持し売り飛ばした彼奴らが願うことは全て金!金!!金!!!さっきの奴も同じだ!私というモノに価値が無いと知ったら無造作に捨てやがった!」

怒りと悲しみを滲ませた顔で少女は叫ぶ。

「これでは私が存在する理由が、この力の意味が無いではないか。こんな薄汚れた人間の世界は変えなければならない。祟神たたりがみになりこの世を消してやろうか、とも思ったがその力も無い。私はもう疲れてしまった。いくら我々神という存在がこの世を救おうとも、この世に存在する粗悪なものが居る限り我々の仕事は終わらない。ならば、考えることは一つ。この世界にもう神は必要ない。」

そう言うと、髪飾りのひび割れた鈴を外し

握り潰した。その瞬間、綺麗だったであろう

金色の鈴は砕け、砂のようにさらさらと散っていった。

「世界はまだ私を必要としているのか?

だが私は…未練も何もない。

銀 鈴と言ったか、邪魔してくれるなよ」

取り出した短刀で銀が制止するより早く喉元を掻き切った。

一瞬苦しそうな顔をした後、全てを思い出したのか申し訳なさそうな顔をして光の中に紛れて消えていった。

消えるその一瞬、少女のは穢れる前の無垢で美しい姿に戻っていた。


1人の神が消えた瞬間だった。

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