第4話
「あなたの人生はこんな終わり方でいいんですか。」
天から声が降ってくるのを私はぼおっとしながら聞いていた。なんだかおなかのあたりがじんじんと痛む気がする。でも、それももうすぐ終わる気もする。
声はなおも、私に話しかける。
「あなたは今、面白い立ち位置にいるんだ。そして、その後が気になる人物だっている。」
天の声―――どうやら、若い男のような天に言われ、なんだかその通りのような気もし始めた。でも、眠い。すごく眠くて、もう目を開けているのだってやっとだ。
「だからさ、私があなたを生かすからさ。安心してくれていいよ。」
突然、私の目の前に白衣を着た若い男が現れた。子どものようにはしゃいだ様子だが、銀縁眼鏡の奥の瞳は冷たい。私の両肩をわしつかんだ。
「戻っておいでよ。この地獄に――――。」
次の瞬間、真っ暗だったこの世界にたくさんの情報が映像となってあふれた。診察台に横たわる女性に向かってオレンジ色の光が吸い込まれていく。目を覚ました女性は、叫び暴れて糸が切れたように倒れた。口や目、耳、体から血を流す。オレンジの光がふあふあと宙を舞っている。また別の女性にオレンジの光は向かう。しかし、その女性は目を覚まして、叫びながら外へ出て車にはねられた。まだまだ、たくさんある。すべて若い女性のその後の映像。みんなみんな死んでいく。
頭を抱え込んで、映像から目をそらしたら、いつの間にか辺りは先ほどの静寂な闇に包まれていた。目から涙があふれてきた。
「おかえり。地獄へ。」
若い天の声がした。
森山さんに起こされ菊花が目を覚ますと、目元が涙でぬれていた。まだまだ現在進行形で涙を流している。よく見ると、幸見さんも幸蔵さんもベッドのそばに立っていた。
「寝言で叫んでいたから心配したんだよ。大丈夫かい。」
「・・・私だわ。」
「え?私がどうしたんだい?」
幸見が心配そうに尋ねる。
「全部、思い出した。・・・あれは全部私だったのよ。」
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