第32話

おじいちゃんを、寝かせた後、スカーレットは、家の中を片付け始めた。

天使さんが、手伝ってくれると、言うので、お願いした。

部屋を元通りに、するのはちょっと時間がかかったけど、問題は、スカーレットの部屋の扉だった。


ぶち壊された扉は、さすがに、困った。天使さんは、これは難しいわと、言った。


スカーレットは、スケッチブックを持ち出して、扉を描いてみた。

一かバチかだった。

すると、扉が入り口についた。スカーレットは、驚いた。

バタバタと、扉がちゃんとあいたり閉まったりできるか、試した。

大丈夫そうだった。

この扉がダメになったら、おじいちゃんに、頼んで、大工さんに造ってくれるように頼もうと思った。


今のおじいちゃんには、休養が必要だった。あんなに派手にやりあった体が、いくら化け物になっていたからって、身体はおじいちゃんだった。

おじいちゃんは、ママのことは、わかるんだと、少し寂しかった。甘えられる人が欲しかった。

ファジーも、本当はもう怖くて来ないだろう、と、思ってた。

大好きなファジーを、失ったと、落ち込んだ。


天使は、気づいていた。そして、「スカーレット、あなたがいいと許可をくれれば、私はまだ、ずっといますよ?」と、言うと、スカーレットは、驚いた。


「私と時々、空を飛びませんか?」と天使は、唐突に言った。「空を?」「飛んでいいの?」と、驚いた。

「はい。飛べますよ。あなたは、スケッチブックを、悪くは使わない人です。だから、そのスケッチブックが、手に入ったのでしょう。」と、言うと、スカーレットは、悩んだ。

でも、自分の勝手で、描いて出てきてくれた天使さんを、縛りたくはなかった。「じゃ、森の中に来てくれますか?」と言うと、天使は「はい」と応えると、スカーレットは、一緒に森へ入った。まず、変わった花がいっぱいあった。進んで行くと、虹色の鹿の親子や、りすや、色鮮やかな小鳥や熊や、アライグマや、いっぱいいた。奥に進むと、こびとさんたちの家があった。こびとさんたちに、声をかけると、ちょこちょこと、こびとさんたちが、出てきた。こびとさんたちは、スカーレットに挨拶をすると、横にいる天使に、驚いた。「こびとさん、この人は、恩人なの」と紹介した。すると、こびとさんたちは、天使の周りをクルクル回った。そして、握手したいらしく、手を差し出した。天使は喜んで、みんなと握手した。こびとさんたちは、「これで、友達」「これで、友達」とみな言い、天使は喜んだ。

日が暮れて来たので、スカーレットたちは、家に帰ることにした。


結局、天使さんは、用がない時は、スケッチブックにいることにした。


軽く夕飯を食べると、スカーレットも疲れて眠ってしまった。


天使も、スケッチブックの中で心地良く眠り出した。

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