第30話
空は雨雲が、もくもくと厚くでき、雷が鳴り出した。
みな、逃げ回っていた。雷は街のあちこちに落ちて、住民は、パニックに陥っていた。
スカーレットは、天使からおりると、スケッチブックを、開いた。すると、中から、ママが出て来た。
ママとスカーレットは、おじいちゃんを、探しながら、荒れてボロボロになった街の中を、歩き回った。
おじいちゃんは、街人を、投げ飛ばしながら、歩いていた。スカーレットは、念のため、青鬼のお面と、赤鬼のお面を、持っていた。
ファジーは、その恐ろしい青鬼が暴れている姿に、恐怖し、天使に護ってもらっていた。
赤鬼のお面は、青鬼が暴れているのを感じ、カタカタと揺れ出した。
スカーレットは、気づくと、建物の裏に隠れ、赤鬼の似顔絵を描いた。そして、赤鬼のお面は、呼び合うように、青鬼のところに、飛んで行った。スケッチブックの赤鬼は、半分しか、塗らなかった。
青鬼は、赤鬼のお面に、息を吹きかけると、赤鬼は、青鬼のように、身体が出来て来て、そして、姿はすべて現れた。
赤鬼は、強い風をふかし始めた。雷と突風で、街はぐちゃぐちゃになった。スカーレットの母のマイラは、怖がりながら、歩いて行った。
青鬼は、マイラを、見つけると、投げ飛ばそうと、近づいて行った。そして片手でつかむと、ピタッと動きが止まった。
そして、「マイラ」と、一言いうと、頭を抱えて、苦しみ出した。
「うっ、うっ、マイラ、マイラ」と、まるで青鬼とおじいちゃんが、葛藤しているように見えた。マイラは、「パパ」と、つかまれて苦しい状態になりながら、呼んだ。
「バパ」と、青鬼は、聞こえた言葉を、真似るかのように、呟いた。
「パパ、マイラ、パパ、マイラ」と苦しみながら、繰り返していた。マイラは、また、「パパ、マイラよ。忘れたの?」と言った。すると、おじいちゃんの声になり、「マイラ、マイラ、会いたかったマイラ」と、言った。そして、マイラをつかんでいた手を離した。
それに気づいた赤鬼は、青鬼のところに行き、マイラを、つかみ投げつけた。青鬼は、いかって、赤鬼を殴った。すると、赤鬼もカッとなり、青鬼を殴った。二人の鬼は、喧嘩を始めた。空は雷がいっそう増え、風は横風になり、辺り一面台風が来たかのような、状態になった。
スカーレットは、ママを見つけると、ママは、グッタリ動かなかった。「ママ、ママ、ママ」と、スカーレットは、泣き出した。ママは、スケッチブックの中に戻って行った。スケッチブックに戻ったママは、倒れたままの姿だった 。
スカーレットは、スケッチブックに、鬼よりも強くと、絵を描き出した。それは、鬼より怖い角をもち、鬼より鋭く、長いキバと爪を持ち、背丈は鬼より高く、身体は大きい、絵を描くと、黒い色に、塗った。
しばらくすると、その化け物は、スケッチブックから、姿を現した。その化け物は、二人の鬼に近づくと、襲いかかった。赤鬼も青鬼も、びっくりした。自分たち以外も鬼がいたんだと思った。黒 い鬼は、その長く鋭い角で、赤鬼を刺し投げつけた。そして、鋭い長い指で胸を刺した。赤鬼は、もがいて苦しみ出した。
青鬼は、赤鬼を助けようと、黒い鬼に掴みかかった。しかし、黒い鬼は、掴み返し、投げ飛ばした。
まるで、スカーレットの怒りが伝わっているような、暴れ方だった。
赤鬼は、苦しみもがいていた。黒い鬼は、とどめを刺した。赤鬼は、呻き声を出して、身体はどんどん小さくなり、顔も小さくなって行き、とうとうお面だけになると、そのお面は、ぱかっと縦に割れ、それから、粉々に崩れて行った。そして、風はピタリと止んだ。
青鬼は、嘆いた。二つで一つの鬼同士だった。片割れをなくし、青鬼は、悲しみで大雨を降らした。
そこに、いつの間にか、スケッチブックに戻ったマイラが、そばにいた。片割れをなくした青鬼は、弱っていた。おじいちゃんの力が強くなり、マイラをまた、見つけた時、おじいちゃんは、鬼に支配されていた心が、殆どおじいちゃんに戻った。
スカーレットは、マイラを、連れて逃げた。おじいちゃんは、「マイラ、マイラ、」と、後を追いかけた。街角まで逃げると、スカーレットは、おじいちゃんが、来るのを待ち、おじいちゃんが、かどを曲がって来た瞬間に、おじいちゃんの顔に、青鬼のお面を被せた。
青鬼は、「ぎゃー」と、叫ぶと、お面が青鬼を、吸い取って行き、青鬼は、小さくなって行き、おじいちゃんに、戻って行った。そして、お面が完全に取れると、おじいちゃたんの顔になり、体の色も肌色に戻っていた。
そして、青鬼のお面も、ぱかっと縦に割れて、粉々になった。
その時、ある骨董屋のあるじが、悲鳴をあげて、絶命した。
スカーレットは、黒鬼さんを、スケッチブックに、戻した。
街は、雷もピタリと止んだ。
スカーレットは、おじいちゃんが、気の毒になり、街の人が出てくると、「おじいちゃんが、怪我したの。助けて」と、言うと、街の人たちは、すごかったな、と、いいながら、静まりかえった、街を呆然と、眺めていた。軽症ですんだ、おじさんたちが、おじいちゃんを抱えると、病院まで運んでくれた。
病院は、怪我人だらけで満員だった。
マイラは、気がかりだから、もう少し、いたいと言うので、意識を取り戻すまでいることにした。
ファジーは、全てが、終わったと思った。スカーレットを探しに行ったが、めちゃくちゃになっている街の中で、途方にくれていた。
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