第20話

その日の夕食は、少女が作った。

そして、おじいちゃんを、呼びに行くと、おじいちゃんは、赤と青のお面を、持ってとてもうれしそうだった。

少女は、呆気にとられた。

少女は、まだ、おじいちゃんは、絵を見て、昔のことを思い出していると思っていた。

「おじいちゃん、夕ごはん出来たよ」と、言うと、「あ、そうか、お前が作ってくれたのかい?」と、言うと、「うん。ねえ、おじいちゃん、それなあに?」と、お面を、見ながら言うと、「あ、これか、これは、以前街で、見つけて安かったから、買ったんだよ。」と、言うと、「ご飯を食べよう」と、ごまかして、ダイニングに行った。

おじいちゃんは、黙って食べていた。少女も、黙って食べていた。


食べ終わると、おじいちゃんは、「美味しかったよ。ありがとうな」と言うと、「良かった」と少女が、返し、二人で一緒に片付けた。


しばらくリビングに二人は、いると、おじいちゃんは、「今日来た人は、気に入らなかったのかい?」と聞くと、「ううん。気に入ったよ。優しそうな感じがした。あの人、あたし好き。」と、あんなに駄々っていたのに、もう機嫌が直っていた。


娘のマイラが、亡くなった時、おじいちゃんは、ショックで、小さな孫の面倒がみれず、知人に預かってもらっていた時期があった。その知人に、「前をちゃんと、みなければならない。あなたの孫は、あなたの唯一の孫ですよ。子供が大きくなるのは、早い、かわいい盛りの孫と暮らして行けば、あなたもかわれますよ」と、言われ、おじいちゃんは、孫と暮らし始めた。


おじいちゃんは、娘のマイラに似ていることがあると、思い出し、苦しくなったり、喜んだり、マイラの子供の頃にそっくりな顔に、さみしく思ったり、可愛く思ったり、複雑な思いの中、孫を育てて来た。

でも、今は、この子が、いてくれて良かったと、心から思っていた。


孫を抱きしめると、「すまんな、おじいちゃん、今日は、少し疲れたよ。先に眠っていいかい?」と、言うと、「うん。いいよ!おやすみなさい」と、おじいちゃんに、キスをすると、少女は、部屋に戻って行った。


部屋に戻ると、少女は、スケッチブックに、「おばあちゃんとお母さんに、会わせてくれてありがとう」と、言うと、少女も、ベッドに入り、スヤスヤ眠り出した。


しかし、その日、麦畑を見たものは他にもいた。


それは、おじいちゃんが、買ってきた、二つのお面だった。


二つのお面は、カタカタと、揺れると、床に落ち、少女を、待った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る