第4話
すると、どこからか、鳥の鳴き声が、聴こえてきた。少女は、むにゃむにゃと、寝言を言っていた。
それは「小鳥さん?綺麗な鳴き声ね。もっといっぱい鳴いて」と、言いたかったらしい。
そのうち、カサッカサッと、足音が聞こえてきた。足音は、二つあった。
少女は、「なあに?何の音?」とまた、むにゃむにゃと言うと、「あれ⁇」と、寝ぼけながらも起きた。
すると、さっきまで聴こえていた鳥の鳴き声が、ピタっと止んだ。
そして、床を歩いているような音も。
「あたしってば、寝ちゃったんだ」と、思うと、「あ、そだ絵!」と、思い出して、出窓に行くと、「あれ?こんな向きだったっけ?」と、鹿の親子の絵を見た。小鳥もくちばしの向きが逆になっているように見えた。
「どうしたんだろ?あたしまだ、寝ぼけてる?」と、不思議になりながら、「あ、夕方になってる!おじいちゃんが、帰ってくる」と、夕飯の準備をしに、部屋を出た。
すると、また、カサッカサッと部屋の中で、何かが、歩いている音がした。
夕飯の準備も、終わり、二人は一緒に食べた。
おじいちゃんは、「久しぶりに街に降りたが、街も変わったな。」と、言った。「そう?あたしには、いつも変わらなく見えるよ」と、言うと、「お前も、街までの行き帰りは疲れるだろう。この家まで、配達してくれるように、頼んできたよ」と、言うと、「えー、あたし、街まで行くの楽しみなのに〜」と、少女は、すねた。そして、食べるのを途中でやめて、キッチンに持って行くと、片付けて、部屋に戻った。
おじいちゃんの考えていることは、わかった。「あたしのためって言って、本当はおじいちゃんが、あたしを街に行かせたくないだけだ」と、少女は、孤独になった。「ママがいたら、もっと自由だったろな」と。
次の日、朝ごはんの用意をせず、スケッチブックとペンを、持ち森の中へ入って行った。朝は、少し肌寒かったけど、いつものことだから、あまり気にしなかった。
いろんな小鳥が、いろんな音色で、鳴いていた。少女は、木にもたれると、早速、小鳥たちを、描いていった。描いているうちに、「あれ?」と、気付いた。その小鳥たちの中に、自分が描いた小鳥そっくりな鳥がいた。
自分が、勝手に色をつけた鳥だから、間違いないと思って、スケッチブックを、見返した。すると、そこに描かれているはずの小鳥が消えていた。
少女は、びっくりして、ぺらぺらめくったけど、どこにもなかった。
キョトンと、していると、少女の前を、虹色の鹿の親子が、通り過ぎて行った。
少女は「あたしが描いた鹿⁇」と、びっくりして、ページを、めくっても、親子の鹿は、どこにもなかった。
少女は、びっくりしたままだった。しばらくして、頬を、つねってみた。痛かった。顔をパンパンと両手で叩いてみたが、カラフルな鹿の親子は、近くでエサを食べていた。
「えー、こんなことあり⁇本当に?」
と、やっと事態を飲み込むと、嬉しくなり、大きなキノコを、描いたり、見たことのない花を描いてみたり、スケッチブックに、いろいろ描いた。家に戻ると、急いで、色を塗り出した。
「何色にしようかなー?」と、考えながら、夢中で描いた。
おじいちゃんが、昼ごはんだと言いに来たが、お腹が空いているのも忘れ、塗っていた。
おじいちゃんは、「全く、反抗期になったのか?」と、ブツブツ言いながら、扉を閉めた。
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